Netflixで配信中の『テプン商事』は、ジュノ2PM)が演じる主人公カン・テプンが独特な感性を発揮して注目商品に目をつけて、商機をどんどん拡大していく。彼は常に亡き父親カン・ジニョン(ソン・ドンイル)を意識しながら、少しでも父親に近づこうと奮闘している。(以下、一部ネタバレを含みます)

■2PMジュノ主演『テプン商事』の時代背景、経済危機と「父親の不在」

『テプン商事』が描いているのは、1997年以降の「IMF危機」と呼ばれた時代だ。当時は、経済が破綻し韓国政府はIMF(国際通貨基金)から緊急支援を受けなければならなかった。まさに、国家が破産寸前まで追い込まれたのだ。

 それによって何が起こったか。経済の不振によって街に失業者があふれるようになった。当時の韓国は家父長制度が強力に維持されていて、父親は一家の大黒柱だった。どの家庭でも、父親を中心にすべてがまわっていたと言っても過言ではなかった。

 しかし、父親が失業して面目を失ってしまう家庭が続出した。いわば、「IMF危機」は「父親の受難時代」を引き起こしたかもしれない。実際、『テプン商事』を見ていると、確かに「父親の不在」が目立つ展開がとても多い。

 前述したように、物語の序盤でテプンの父親カン・ジニョンが急死してしまい、以後の彼は母親ジョンミ(キム・ジヨン)と2人きりになった。そんな2人が家を失って転がり込んだのが、『テプン商事』社員のオ・ミソン(キム・ミンハ)の実家だった。ここにも両親がいない。いるのは、ミソンの祖母、妹、弟だけであった。

 さらに言うと、テプンの親友であるワン・ナムモ(キム・ミンソク)の境遇も母子家庭だ。母親ウルリョ(パク・ソンヨン)は夫を失ったあと苦労して銀行の副支店長にまでなったのに、「IMF危機」で職を失い、苦境に陥った。そのうえ、ネズミ講に騙されてしまい、資産までなくしてしまった。

 ウルリョは百貨店の清掃の職を得たが、そこで会ったのが息子の彼女のオ・ミホ(クォン・ハンソル)だった。ミホはミソンの妹だ。