ウルリョはナムモの将来を心配して、ミホに対して「息子ともう会わないでほしい」と冷たく言い放つ。そのときに例えとして出したのが「父親がいない家庭では貧しさから脱することができない」という話であった。

 現在から27年くらい前の話だ。当時は「父親不在=貧しさ」と決めつける風潮がまだ根強く残っていた。そういう固定観念を押し付ける母親にナムモは強く反発するのだが、じかに厳しいことを言われたミホは、言い返すことができなかった。彼女も、父親不在の家庭環境が経済的に苦しいことを骨身で知っていたからだ。

 歴史的に朝鮮王朝時代から儒教的な価値観が濃厚だった韓国。その中で父親は家父長制度の絶対的な存在だったが、その屋台骨が揺らぎ始めたのが、まさに「IMF危機」以降の社会の変容だった。

 この『テプン商事』は、めまぐるしく動く韓国社会の変化を、経済と家父長制度の両面で端的に示している。本当に、時代の移り変わりを象徴的に見せてくれるドラマだ。

Netflixシリーズ『テプン商事』独占配信中

●配信情報

[2025年/全16話]演出:イ・ナジョン、キム・ドンフィ 脚本:チャン・ヒョン

出演:ジュノ(2PM)、キム・ミンハ、キム・ミンソク、クォン・ハンソル、イ・チャンフンキム・ジェファ、キム・ソンイル、イ・サンジンキム・ジヨンキム・サンホ