ここ数年の韓国ドラマには、苛烈なSPEC(ステイタス獲得のための諸条件)競争が生んだ悲劇や疲弊した韓国人を癒すストーリーが多い。Netflixで配信中の『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』はその典型だ。(以下、一部ネタバレを含みます)
■Netflix『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』見どころは?役員と部下の板挟みに苦悩する部長はリュ・スンリョンのハマり役!
本作の主人公キム・ナクス(リュ・スンリョン)は、大企業の役員昇進を目前にしながらトラブルに巻き込まれる。その姿は、会社員として岐路に立たされる50代以上の視聴者には身につまされるに違いない。
しかし、リュン・スンリョン(1970年生まれ)の人間味のある演技が救いになっているのでエンタテインメントとしても成立している。
ナクスは家族思いの好人物なのだが、日本だったら “昭和” とか “老害” と言われてしまいそうなマインドが災いして妻や息子、部下と心が通わず、役員昇進の好機を逃してしまう。
そんなキャラクターは、『パイン ならず者たち』『タッカンジョン』『ムービング』、映画『エクストリーム・ジョブ』『7番房の奇跡』などで味のある人物を演じたリュ・スンリョンにうってつけだ。他にこの役がハマりそうな俳優を考えてみたが、『財閥家の末息子』やパク・チャヌク監督の映画『No Other Choice』のイ・ソンミン(1968年生まれ)くらいしか思い浮かばない。
父親に反発心をもっている息子(チャ・ガンユン/『いつかは賢いレジデント生活』)に、「SPEC固めの役に立つからオレの会社の体験入社に応募しろ」と言ってみたり、「大企業の部長職に就き、ソウルのアパートに住み、息子を大学に入れた自分が誇らしい」と言って悦に入ったり。今の韓国人のメンタリティを象徴する、おもしろくも哀しいキャラクターである。