哲仁王后〈チョルインワンフ〉~俺がクイーン⁉~』の冒頭、現代の韓国大統領官邸で腕を振るう自信過剰な男性シェフ(チェ・ジニョク)が、身に覚えのない罪を着せられてしまう。

 彼は逃れる途上で誤ってプールに落下。再び目を覚ましたとき、そこは全く見知らぬ世界だった。なんと、彼の魂は時空を超えて朝鮮王朝時代へとタイムスリップしていたのである。しかも、魂が入り込んだ先は若き王妃の肉体であった。(以下、一部ネタバレを含みます)

■ファンタジー史劇『哲仁王后』は笑い+緊迫したサスペンスで最後まで飽きさせない仕掛けが見事!

 本作の演出を担ったのは、大ヒット作『花郎<ファラン>』のユン・ソンシク監督。そのコメディセンスは、破天荒な物語の中でも縦横に発揮されている。さらに、歴史劇の重厚さを絶妙なバランスで融合させた手腕は見事である。

 ストーリーを牽引する主役コンビのキャスティングがとてもいい。

「視聴率女王」として今、Netflixサラ・キムという女』でも大注目のシン・ヘソンがヒロインを務めた。そして、相手役には『愛の不時着』の熱演で、一躍スターダムにのし上がったキム・ジョンヒョンが抜擢された。この2人が、哲仁王后と朝鮮王朝25代王・哲宗(チョルジョン)を演じている。

 特筆すべきはシン・ヘソンが熱演する王妃のぶっ飛んだキャラクター。中身は現代を生きてきた血気盛んな成人男性だ。それが厳格な身分制度の朝鮮王朝で、最高位の女性として振る舞わなければならない。態度や言葉遣いがまともになるはずがないのだ。男性特有のがさつな動きや現代語を連発する王妃の姿は、まさに爆笑必至である。

 とりわけ腹を抱えて笑ってしまったのが、王宮内のあちこちで繰り広げられる逃走劇である。奇行を繰り返して逃げ回る王妃と泣きそうになりながら彼女を追いかける女官たちの姿は極端なドタバタ。笑いのツボを激しく刺激されてしまう。

『哲仁王后~俺がクイーン!?~』(C) STUDIO DRAGON CORPORATION
『哲仁王后~俺がクイーン!?~』(C) STUDIO DRAGON CORPORATION

 しかし、笑いだけで物語が進むわけではない。ドラマの空気が徐々に変化を見せる。先の読めないシリアスな展開が、怒涛の勢いで押し寄せてくるのだ。

 最大の焦点は、シェフの魂の行方である。彼は無事に元の現代社会へと帰還できるのだろうか。同時に、肉体を乗っ取られてしまった本来の王妃の魂はどうなるのか。そこが、非常に気になるところだ。