実績のない映画監督志望の主人公が、苦悩しながら1ミリずつ這い上がっていくNetflixヒューマンドラマ『誰だって自分の無価値と闘っている』。ク・ギョファンコ・ユンジョンオ・ジョンセカン・マルグムパク・ヘジュンなど、演技派俳優たちが演じる主要なキャラクターが立っていて見応えがある。さらに、中盤からは超が付くベテラン個性派俳優を確認し、うれしくなった。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『誰だって自分の無価値と闘っている』大物俳優役ペ・ジョンオクはどんな人物?

『誰だって自分の無価値と闘っている』第4話にトップ女優オ・ジョンヒ役で登場したのは一昨年、還暦を迎えたペ・ジョンオク(1964年生まれ)だ。 

 相手の心のひだまで見透かすような冷たい目。感情の揺らぎを感じさせない独特な声質は、『涙の女王』や『北極星』で存在感を示したイ・ミスク(1960年生まれ)に匹敵する凄みを感じさせる。ただならぬ関係にある映画製作会社のPDウナ(コ・ユンジョン)がノーブルな印象なので、意外性のある配役に思えた。

 劇中、ジョンヒは新作主演映画で1000万人動員を視野に入れたが、過去に実の娘を捨てたといスキャンダルが持ち上がり、関係者はその揉み消しに躍起になる。その娘がじつはウナだったので、物語は波乱含みだ。

劇中の第4話にはジョンヒ(ペ・ジョンオク)が、「流行言葉でHIP(最先端)のふりをするな!」と娘のミラン(ハン・ソナ)を叱るシーンが。写真は懐古ブームで脚光を浴びた乙支路3街ビアホール「HIP支路HOF広場」の看板

 ペ・ジョンオクは、韓国の視聴者にとってはドラマ俳優のイメージが強いかもしれない。1985年にKBSの特別採用タレントとして日曜の朝ドラにデビューしてから40年間、途切れることなくドラマに主演し続けている。最近では、『名前のない女』『哲仁王后〜俺がクイーン!?』『白雪姫には死を ~BLACK OUT』『ずっとあなたを待っていました』『サラ・キムという女』などに出ているので覚えている人も多いはず。

 しかし、1980年代に韓国カルチャーにふれた日本人にとっては、ペ・ジョンオクは銀幕女優のイメージが強いはずだ。最近亡くなった国民俳優アン・ソンギ主演映画『鯨とり』とともに日本の映画ファンを韓国映画の世界に呼び込んだ名作『チルスとマンス』(1988年)では、主人公の塗装工(パク・チュンフン)が片思いする女子大生を演じた。今の女帝キャラとはほど遠い、笑顔が眩しい快活な女性役だった。

 1991年には大鐘賞を総なめにした映画『若き日の肖像』で奔放な酌婦を演じて助演女優賞を獲得。単なるアイドル女優ではないところを見せつけた。

ペ・ジョンオクの映画デビュー作『チルスとマンス』は、アン・ソンギとパク・チュンフン扮する二人の看板塗装工が、写真のソウル高速バスターミナル横のビル屋上に籠城する話だった