軍人たちの給食作りを担当する新米炊事兵ソンジェ(パク・ジフン)の成長物語『伝説のキッチン・ソルジャー』は、いろいろな意味で時代の変化を感じさせるドラマだ。

 20年ほど前まで、「食堂に行列して食べるくらいなら、隣の空いている店で食べる」と言う人が多かった韓国で、グルメを題材としたドラマ、しかも軍人が食べるものにフォーカスしていることがまず驚きだ。しかも、ウェブトゥーン原作ならではの映像処理が斬新である。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『伝説のキッチン・ソルジャー』炊事兵ソンジェを成功に導くゲーム感覚の映像処理

 今を感じさせる描写のひとつが、劇中、ソンジェに課せられたクエスト=料理作りのヒントを示したり、料理の出来栄えや部隊内での人間関係を評価したりするゲーム画面のような描写だ。映画ファンなら、米国の大ヒット作『ゾンビランド』シリーズで主人公(ジェシー・アイゼンバーグ)がゾンビ世界をサバイバルするための心得32カ条のデジタル描写を思い出すだろう。

 こうした画面のデジタル処理は、韓国でも意外と早く試みられている。『秘密の森』のペ・ドゥナと『善徳女王』のイ・ヨウォン主演映画『子猫をよろしく』がそれだ。2001年の公開当時は本格的なデジタル時代の到来を予感させる映像処理として話題になった。

■ひと昔前なら一笑に付された!?炊事兵のペットフード作り

『伝説のキッチン・ソルジャー』第10話にはもうひとつ、時代の変化を感じさせる部分があった。ソンジェが連隊長(アン・ギルガン)を懐柔するために作ったのが人間の食べ物ではなく、連隊長が溺愛する犬のためのペットフードだったことだ。

 ソンジェは先輩炊事兵ドンヒョン(イ・ホンネ)や補給官ジェヨン(ユン・ギョンホ)とともに、連隊長が通っている聖堂に信者を装って現れる。軍人と聖堂という日本の人にはピンとこない描写も、韓国ドラマらしい見どころのひとつだ。

全羅北道・益山(イクサン)の聖堂。韓国人の宗教観は日本の人が想像するよりずっとカジュアルだ

 ペットフードがグルメドラマの題材になるなど十年以上前なら一笑に付されただろう。しかし、我が国では単身世帯の増加やコロナ禍での在宅時間の増加を背景に、この十数年間でペットを飼う人が急増した。かつては日本同様、韓国でも犬は庭先で飼われていたが、今は都市の住宅事情もあり、室内飼いがふつうである。