タイプスリップを生かしたユニークな韓国時代劇『暴君のシェフ』では、新進気鋭の俳優イ・チェミンが精悍な姿で、朝鮮王朝の国王イ・ホンを演じている。
イ・ホンは非凡な才能を備えながらも、自らの複雑な感情を血塗られた手段でしか表現できなかった。その残虐な行動の深淵には、理解されない孤独感と深い悲哀が漂っていた。葛藤を抱えたこの国王は、史実では“暴君”としてあまりにも有名な燕山君(ヨンサングン)がモデルとなっている。
■朝鮮王朝の悪評な三大国王とは?「非道な簒奪者」「残虐な無法者」「前代未聞の屈辱王」
朝鮮王朝は典型的な中央集権国家であり、頂点に立つ国王は誰も逆らえない絶対的権力を掌握していた。朝鮮王朝の実態をわかりやすく解説した歴史エッセイ『謎解き!朝鮮王朝 宮廷ミステリー 韓国時代劇の「なぜ?」を解明する』では、27人いた国王を詳しく紹介している。それを参考にして「悪評まみれの3大国王」を選んでみよう。
●7代王・世祖(セジョ)〔生没年1417~1468年〕
在位期間は1455年から1468年まで。即位前は首陽大君(スヤンデグン)と呼ばれた。聖君として名高い4代王・世宗(セジョン)の次男として誕生し、後の6代王・端宗(タンジョン)の実の叔父にあたる。しかし、底知れぬ権力欲にとりつかれた彼は、血の繋がった甥を激しく威圧し、力ずくで王座を簒奪する凶行に及んだ。
その後も冷酷な弾圧は続き、端宗の復権を狙った忠臣「死六臣」を無慈悲に虐殺した。さらに端宗が存命する限り反逆の火種が消えないと考え、前王を平民へ叩き落として死に追いやった。こうした非道な振る舞いによって、後世でも評価は最悪である。
●10代王・燕山君(ヨンサングン)〔生没年1476~1506年〕
在位期間は1494年から1506年まで。9代王・成宗(ソンジョン)の長男として誕生した。生まれつき気性が荒く、激情に駆られやすい性質を抱えていた。在位中は寵愛する側室の張緑水(チャン・ノクス)とともに、堕落しきった日々を貪り、国家の財源を完全に枯渇させてしまった。その結果、民衆から深い恨みを買った。
さらに、気にいらない官僚の虐殺を繰り返した。1506年に勃発したクーデターによって最高権力者の座から引きずり下ろされ、追放先の江華島(カンファド)で惨めな最期を遂げた。