■日本は第8波となるコロナ禍に突入!

 東京や北海道で新規感染者が1万人を超え、東京医師会からも発表があり、日本は新型コロナウィルスの流行第8波に入ったと考えられます。結局のところ、こまめな手洗いと会食や飲酒の席自粛など、基本的な予防とワクチン接種に頼る以外、有効な対策が打ち出せない現状ですが、対するウィルスの方は日々進化を続けています。

 

 しかも、新登場のウィルスには神話やゲーム等に登場する、いかにも恐ろしそうなモンスターの名前がつけられています。地獄の門を守る三つの首を持った番犬ケルベロスや、ワシの頭と翼にライオンの胴体や尻尾を持つグリフォン……そんな怪物たちの名前の変異ウィルスがあることは日本でもテレビのワイドショーなどで取り上げられていましたが、それだけではないのです。


 第8波で日本を襲うウィルスと、その名前の元になったモンスターたちを見ていくことにしましょう。相手を正しく知ることは、戦いに勝つ第一歩です。

 

■地獄の番犬ケルベロス

 ギリシア神話の死者の国の王ハデスの飼っている猟犬で、冥界の門を守る番犬でもあります。三つの首と竜の尾を持ち、背中のあちこちに蛇が生えた姿で知られています。さまざまな怪物を産んだ蛇の体を持つ女神エキドナの子で、兄弟姉妹にはヒュドラやキマイラ、双頭の犬オルトロスなどゲームなどの敵モンスターとしてよく登場する名前が並びます。


 神話においては、冥界に下りてきた英雄ヘラクレスが捕獲に成功し、一度地上に連れ出したとされます。それは全能の神ゼウスと人間の女性の間に生まれたヘラクレスでも実現は不可能な難題として出された条件でした。ヘラクレスは捕らえることができましたが、負傷も追っています。ケルベロスは神もしくはそれに近い存在でも苦戦するほど強いモンスターだったのです。

 

 ケルベロスによく似た三つ首の犬が、『ハリー・ポッター』シリーズの第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』に登場していたことを覚えている方もいるかもしれません。ハデスならぬハグリッドの飼い犬で、恐ろしい番犬ですが、音楽を聞いて眠ってしまいました。
 この三つ首の犬の名はケルベロスではなくフラッフィーですが、ケルベロスをモデルとしています。音楽を聞いて眠ってしまうのは、オルフェウスという竪琴の名手が亡くなった妻を求めて冥界に向かった時、ケルベロスが演奏に聞き惚れ門を通したという神話に由来しています。

 

 日本の新型コロナ第8波は、現状このケルベロスの名をつけられた「BQ.1.1」が主流になるのではないかと警戒されています。「BA.5.3」から派生した「BQ.1」と「BQ.1.1」は当初ナイジェリアでは感染が報告され、8月にアメリカやイギリス等の地域で流行しました。
 現時点ではケルベロスの日本での感染例は少ない状況ですが、渡航規制が大幅に感染されている今後、増えていくことは確実視されています。

ヘラクレスとケルベロス(1608年)

■王権の象徴グリフォン

 ゲームなどに登場することの多いこのモンスターは、比較的名前もその姿も良く知られていますが、意外とその来歴がわからない謎の存在です。
 空の王者であるワシと、陸の王者のライオンの融合は力の象徴として王国や騎士団の紋章等に好んで使用されました。ウクライナへのロシア侵攻には、その前段階となる「クリミア危機」が2014年に起こっていて、ロシア連邦に編入されたことになっている「クリミア自治共和国」の国章にもグリフォンが描かれています。

 

 現代の例をもうひとつ挙げるなら、『ハリー・ポッター』シリーズで主人公ハリーが属す寮の名称が「グリフィンドール」で、その紋章にも立ち上がったグリフォンの姿が入っています。「グリフォン」と「グリフィン」は同じもので、地域によって呼び方が異なります。

 

 ヨーロッパだけでなく中東やエジプトも含む広範囲で伝説的な怪物として知られる存在で、現在知られる姿(ワシとライオンの合成)や名前は古代ギリシアからと思われますが、古代ギリシアの人々から見ても「古代からいた」と考えられていたモンスターです。
 メソポタミア文明の翼を持つスフィンクスや、ライオンの頭とワシの体のアンズーという鳥型モンスターなどがルーツにあるのかもしれません。

 

 新型コロナのグリフォンは、「XBB」と呼ばれる変異系統につけられたニックネームで、元を辿ると日本の第6派の頃に流行した「BA.2」系統の「BA.2.75.3」から分岐した種類のようです。2種類の変異体の特徴を併せ持つことから分類名に「X」がついています。
 9月ごろにシンガポールで大流行し日本にもきたようです。2種の特徴により感染しやすいとか、従来のワクチンの効果が薄いとされています。

クリミア共和国の国章