■営業マン時代に「孤独死」に遭遇
その当時、児玉さんが担当していた賃貸物件で老人が孤独死した。しかも発見が遅れたため遺体は腐敗し、体液が流れ出す悲惨な状況だった。
「そのうえ、部屋は天井までゴミが積み上がったゴミ屋敷。全部捨てなきゃいけないんですが、腐敗したご遺体から細菌感染する恐れがあるため、そうしたゴミは細菌が漏れないよう全部パッキングして、産業廃棄物として処分しなきゃならないんです」
無理もないが老人の遺族は相続を放棄。結局、物件の大家が400万円ほどかけてリフォームすることになった──こうした事例は珍しいことではなく、たいがい大きな負担が大家にのしかかる。しかも残るのは「事故物件」という風評だけ……。
■国が認める事故物件の基準!?
「当時は、そうした風評をどうやって拭うことができるのかわからなかった。大家さんに聞かれても、『今を乗り切りましょう!』『時間が解決するんです』と、誤魔化すしかなかったんです……」
よく「事故物件はあいだに1人借主がいれば、新しい借主に教えなくてOK」と、いわば“事故物件ロンダリング”があって隠蔽(いんぺい)される──なんて噂話を聞くが、実はこれ単なる都市伝説で、現在は厳密なルールがあり隠すなんて無理なんだそうだ。
2019(令和3)年には、なんと国から“事故物件の基準“が定められたという。それが、国土交通省が策定した「宅地建物取引業者人の死の告知に関するガイドライン」だ。
これに拠れば、俗に事故物件というのは、自殺や殺人、火災などが発生したという「心理的瑕疵(かし)」のある物件のこと。なお、これらについては告知義務があるが、孤独死などは伝える必要はないとされている。あれ? じゃあさっきの事例なら隠蔽できるんじゃ……。
「いえ、『死後、身体に変化があった場合にはすべて告知事項となる』と定められているので、さっきの事例のような場合は、いくらキレイにリフォームしても、借主に伝える義務があるんです」(児玉さん)
■事故物件の心理的瑕疵を除く
しかも、告知期間は3年。ほかにも借主に聞かれたら正直に事故物件と言わなくてはならないなど、なかなか大家には厳しいガイドラインなのだ。
ただでさえリフォームでカネはかかる、悪い噂のせいで借主はつかない、そのうえお上まで厳しいルールを押し付けてくる。弱り目に祟り目の大家のために、児玉さんは一念発起して、この株式会社カチモードを立ち上げたという。
「困ってる家主さんのために、事故物件の心理的瑕疵を取り除く不動産コンサルティングを始めようと。それで家族の猛反対など紆余曲折あった末、この仕事を始めたんです」
とはいえ、どうやって「心理的瑕疵」を取り除くのか?
そもそも同社は不動産コンサルティング会社として所有者から依頼を受けているため、リフォームや特殊清掃がどう行なわれたのかを知ることができる。そこで事故物件の清掃前・清掃後を記録に残し、賃貸あるいは購入希望者にその説明をする。部屋や建物には一切、事件や事故の痕跡が残っていないことを納得してもらうわけだ。
■「オバケ調査」ってどういうこと?
とはいえ、ここまでだったら、正直、誰でも思いつきそう。だが、「これだけでは幽霊が出る、怪異が起こるという風評や心理的瑕疵は拭えない!」と、児玉さんが一計を案じたのが「オバケ調査」の実施だった。
……え? オバケの調査??? 急にズッコケ3人組かテレ東の深夜バラエティみたいな響きなんですが……と詳しく話を伺うと、ガチもガチ、大真面目で徹底的かつ科学的な調査だった──。
(気になる「オバケ調査」の実態は12月13日18時公開の第2回へ。乞うご期待!)
●取材協力/株式会社カチモード https://kachimode.co.jp/