■ミステリ作家と怪談師の恐怖体験
松村 青柳さん自身は、怖い体験をしたことがあるんですか。
青柳 『怪談青柳屋敷』の第一弾に書いた体験談が唯一ですね。29歳の時、関西のとある山城を登っていたら耳元で声がして、手を誰かに触られた。僕も一応ミステリ作家なので「本当に? こんなことが自分に起こる?」とかなり懐疑的に検証したんですけど、声の正体はよく分からなかったです。自分の身に起きると、やっぱり気持ち悪いですよね。
松村 僕も田中俊行さん(※7)と泊まった遠野の宿で、変な話し声を聞いたことがあります。その声と関係あるかどうか分かりませんが、田中さんが夜の廊下で館内着を着た男の子を見かけて。「こんな時間に小さい子が一人でおかしい」と話していたら、部屋のドアがガチャッと一人でに開いて、二人とも震え上がって寝ました(笑)。翌朝確かめてみると、そんな子は宿泊客にいないようでした。
※7 呪物蒐集家、怪談師、イラストレーターなど多彩に活躍。『クレイジー・ジャーニー』などメディア露出も多い。
青柳 遠野ってことは座敷わらしですかね。
松村 そう思って宿の人に聞いたんですが、座敷わらしはいないそうです。
青柳 今の話を聞いていて思いましたが、ひょっとしてチビルさんは怖がり?
松村 かなり怖がりです。怪談は仕事にしているので平気なんですけど、映像や音声はいまだに怖くて、ホラー映画などもあまり観られません。田中俊行さんの所持している「殺したからな」という音声は、何度聞いても怖くて駄目ですね。
青柳 怪談師にしては珍しいタイプかもしれないですね。平気そうな人が多いから。
■青柳さん、うち(事故物件)泊りにきます?
松村 最近妙に怖いのは、家に帰った時、自宅のインターホンをなぜか押したくなるんですよ。独り暮らしで、誰も答えるはずがないのに。僕の住んでいる部屋は事故物件なので、誰かが答えたら怖いだろうなと。
青柳 自宅で何かあるのは嫌でしょうね。今のところ何ともないんですか。
松村 甘め判定で、まだ何も起こっていないはずです。引っ越しの日に勝手に内側からドアロックがかかったりしましたが、まあ僕が腕でひっかけたのかもしれないですからね。
青柳 かなり際どい判定ですよ(笑)。それ以外に実体験は?
松村 金沢の実家では時々ありました。祖父が建てた古い家なんですけど、家族で夕飯食べていると、台所にかけてあるおたまが触れていないのにカンカンカンと小さく揺れたり。鼻を押すと音が鳴る犬のキャラクターのマグネットが、夜中にずっと鳴っていたり。仏壇のお鈴がひとりでに鳴ることもありましたね。
青柳 かなりあるじゃないですか。何か思い当たる原因はあるんですか。
松村 特に因縁はないと思います。ただ徒歩で行ける距離に、全国的にも有名な心霊スポットがあって。その関係かもしれません。
青柳 ちなみに事故物件に住まれたのは、わざとですか?
松村 もちろんわざとです。事故物件といっても自然死ですけど。高齢の女性が夏場に亡くなって、2週間ほど放置されていたという部屋です。うちに泊まりに来た人はその部屋で寝てもらうことになっているので、よろしければ青柳さんもぜひ。
青柳 いや、遠慮しておきますよ(笑)。