■こんな怪談番組&イベントが見たい! 

青柳碧人

青柳 しかしいくら取材しても、人前で披露できない話ってありません? たとえば有名な刑事事件に関わっている話とか。 

 

松村 ありますね。災害や大事故に関わる話にも慎重になります。ある程度年月が経たないと、エンタメとして語ることは難しい。僕は日航ジャンボ機墜落事故の怪談が3つくらいあるんですが、やっぱり時と場所を選びます。 

 

青柳 そうですよね……。ところで、話は変わるんですが、僕にはいつか見たい番組があるんです。『アメトーーク!』の芸人ドラフト会議っていう企画、知ってますか? もし自分が冠番組を持つなら、誰をひな壇に呼びたいかを話し合うという企画なんですけど、それの怪談版を見たいんですよ。怪談番組のプロデューサーを集めて、怪談師さんを前にドラフト会議をやったら盛り上がるんじゃないかと。 

 

松村 僕は怪談イベントグランプリを開催してみたいんです。渋谷怪談夜会とか怪談怪とかシリーズで続いている怪談イベントの中で、一番面白いのはどれかを決定する企画。複数のイベントがコラボすることで、お客さんの発掘にもなると思うんですよ。 

 

青柳 いいですね。語りの賞レースがあるなら、怪談聞き上手グランプリがあってもいいかも(笑)。怪談って聞き手によって変わってくるところもありませんか。 

 

松村 あります。怪談ファンを前に語ることが多いので、たまにまったく聞いたことがない人と共演すると新鮮ですね。以前ラジオ番組に呼ばれた時は、いちいち「嘘だろ!」と驚いてくれるので嬉しくなりました(笑)。 

 

 

■語り手と聞き手の「共感」が怪談の本質 

 

青柳碧人とチビル松村

青柳 怪談って、語り手と聞き手が作り上げているものなんでしょうね。同じ話でも、くり返し語られているうちにクオリティが上がっていきますし。 

 

松村 僕も取材した怪談は、まず会社の人に話してみます。その反応を見て、構成を直したりということは多いですね。でも語りが上手くなりすぎると、それもまた違うんですよね。怪談の本質はリアリティとか共感にあると思うので、話芸が研ぎ澄まされると、そこから遠ざかってしまう。 

 

青柳 どこに重点を置くかは十人十色ですが、チビルさんの怪談は作り込みすぎないところに良さがありますからね。 

 

松村 怪談社の糸柳寿昭(※2)さんには「お前は本気実話怪談やから。賞レースで勝つのは無理」と言われたことがあります。 

※2 糸柳寿昭(しやな・としあき)氏と上間月貴(かみま・つきたか)氏を中心に、怪談を蒐集、書籍の刊行やイベントを行なう団体。

 

青柳 怪談グランプリや最恐戦などの賞レースでの優勝は目指していますか。 

 

松村 一応視界には入っています。そのために自分のスタイルを変えたり、というのはないですけど。 

 

青柳 正直、チビルさんの怪談を評価できる賞はないんじゃないかな。文芸の世界にもいくつか大きな賞があって、受賞すると箔がつくのは確かなんです。でも僕はそれよりも作家業を楽しみながら、長く続けられることの方がずっと大切。賞は気づいたらもらっていた、くらいの方が格好いいんじゃないですか(笑)。 

 

松村 そうですね。僕も怪談をずっと続けていきたいです。今のところお仕事はたくさんもらえているので、このままやっていけたらいいんですけど。 

 

青柳 大丈夫だと思いますよ。チビルさんは実話怪談に新しいものを付け加えた人だと思うし、そこからの流れも生まれつつありますから。これからも説明のつかない、奇妙な怪談で僕ら楽しませてください。 

 

松村 ありがとうございます。『青柳怪談屋敷』の第三弾も楽しみにしています。