道ならぬ恋に走った既婚女性の「誰も傷つけずに夫と別れて彼と一緒に暮らしたい」という都合の良い願いが、和合と縁結びの神ククリヒメノカミにお参りしたら本当にその通りに叶ってしまったというお話から、第8回はその御神徳の源に迫りました。
今回は、ククリヒメノカミの神話の謎を私なりに深堀りして、お参りの際に気をつけたいことをみなさんにお伝えしたいと思います。
■「和合」したわりには念入りな禊

前回は、死んでしまった妻のイザナミノミコトを黄泉の国まで追っていったイザナキノミコトが、別れ話がもつれて口論していたところへ突如現れたククリヒメノカミの謎の一言に得心して帰ってきたお話をご紹介しました。
「古事記」にはなく、「日本書紀」で異説(一書)として記されたこの登場シーンから、ククリヒメノカミはイザナキとイザナミを仲裁した「和合」「縁結び」の神とされています。
しかし、イザナキは結局はイザナミと別れ、黄泉の国から戻ると「穢れてしまった」と念入りに体中を洗って禊(みそぎ)をしています。その後、イザナミが登場することはありません。
■ククリヒメは何を言ったのか

すべての生みの親・イザナキをたった一言で納得させた、そのマジックワードとは?
画像:shutterstock(生成AI)
イザナキは、イザナミが遣いをよこして「私はここへとどまるべきで、一緒に行くことはできません」と伝えただけでは納得せず、ククリヒメからさらに何かを言われたことでようやく踏ん切りをつけて帰っていきました。
ここでククリヒメがイザナミの伝言と同じように「別れたほうがいいですよ」と追撃する必要があったでしょうか。私なら、いきなりやってきた他人に相手側の話をされたら、なおさら反発する気がします。ククリヒメが「別れ話」でイザナキを諭したのなら、それは「和合」「縁結び」という解釈でよいのでしょうか?
これは私の解釈ですが、「和合」「縁結び」の神であるククリヒメは実は、イザナキに本当にイザナミとの「和合」「縁結び」を持ちかけたのではないでしょうか──。