■死者と「縁結び」して大丈夫?

ただし、黄泉の国にいるイザナミはすでに体が腐ってしまっており、生き返ることはできません。そのイザナミと「和合」し「縁結び」されたければ、イザナキも黄泉の国でともに暮せばよいわけです。
しかし、黄泉の国で暮らすということは死者になるということです。ククリヒメは、死んでしまったイザナミへの執着を捨てることができないイザナキに、イザナミとの「和合」「縁結び」が意味するところを話し、「それでもそうしたいなら、させてあげましょうか?」と囁いたのではないでしょうか。
そこで冷静になったイザナキはイザナミへの執着を捨て、「和合」「縁結び」をせずに戻ってきた、と考えると辻褄が合う気がしませんか? 念入りに行った禊は、己を見失いかけた自らへの戒めも込めてのことだったのかもしれません。
■「縁結び」には怖い側面も…

「死」や「無常」を象徴する紫陽花とククリヒメの組み合わせ……意味深だ。
画像:shutterstock
当たり前のように黄泉の国に現れたククリヒメノカミは、生者と死者をつなぐ力のあるシャーマン(巫女)の女神ともいわれています。
死者との「縁結び」までできてしまう、まさに異次元の力を持つククリヒメは、本当に力のある「縁結びの神」といえるでしょう。
「縁結び」というほんわか温かい語感から、いいご縁をいただけるものと勝手に思いがちです。しかし、特にククリヒメ様にお願いする場合、縁結びの結果どうなるか本当によく考えて、それを受け入れる覚悟を決めたうえでお願いしたほうがいいと思います。
「結んであげられるけど、本当にいいのね?」というようなご縁まで結んでくれるククリヒメノカミ。イザナキのように「やっぱりやめておきます」と引き返しても、怒ったりはしないはずです。
ただし、「縁結び」には怖い側面もあるのだと肝に銘じて、本当に「ここぞ」という覚悟を決めた場面にこそお願いすると良いと思います。