■「コンプラの神」として推奨したい

実はビジネスパーソンにも信仰の篤い白山神社。やっぱりコンプラの神様だから?
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とはいえ、イザナキが黄泉の国から戻れたのは、イザナミとの「和合」「縁結び」が死という弊害を伴うことをククリヒメが事前に知らせたからです。十分な情報を提供し、本人自ら冷静に判断できるようにする、医療現場で行われるインフォームド・コンセントに通じるものがあります。
妻を失ったという心理状態や、「神生み」という重大な仕事が残っているという社会的側面も考慮してイザナキに選択の機会を与えた点。さらには日本最初の正史である「日本書紀」ですらその内容がわからないという、機密情報の秘匿、守秘義務の徹底、プライバシー尊重の姿勢。まさにこれはコンプライアンスの理想的な姿といえるのではないでしょうか。
縁結びの神であるククリヒメは、商談成立の御神徳があるとしてサラリーマンの信仰も集めているそうですが、仕事をしている皆さんや企業関係者に「コンプラの神」としてのお参りも推奨したいところです。
■全国に広まるククリヒメへの信仰

ククリヒメノカミを祀る白山(はくさん)信仰は、石川、岐阜、福井県にまたがる白山(標高2702メートル)を中心に全国に広がった神仏習合の信仰です。
ククリヒメノカミと同一とされる白山比咩神(しらやまひめのかみ)は、仏教の十一面観音として全国の白山権現社(現在の白山神社)で祀られました。
十一面観音は特に病気平癒の力がある現世救済の菩薩として信仰を集めました。黄泉の国からイザナキを戻らせたククリヒメノカミの力と重なるものがあるように思います。