Netflix韓国ドラマエージェントなお仕事』は、俳優vs俳優、俳優vsマネージャー、俳優vs監督など、我の強い者どうしの対立が描かれることが多い。そのなかで、6話のソ・ヒョンジュ(チュ・ヒョンヨン)と、ヒョンジュの母(キム・ヨンア)のPC画面越しの釜山訛りでのやりとりは、いかにも我が国、韓国の親子らしい心温まるシーンだった。

 鍋ごとインスタントラーメンをすする娘ヒョンジュに母が言う。

キムチあるの?」

 炭水化物で手っ取り早く腹を満たそうとする我が子を気づかう言葉だ。ヒョンジュが無言でキムチのパウチを見せると、母がすかさず言う。

「キムチ送ってあげようか?」

 3話で所属事務所の人たちに手作りの惣菜を持ってきたベテラン女優キム・スミにも通じる母性の発露である。だが、ヒョンジュは「要らない」と、つれない返事。

「母さん知ってる? ソウルのキムチは塩辛入れないんだよ。最初は水っぽく感じたけど、もう慣れちゃった」

 韓国各地から水産物が集まる半島南部の釜山や全羅道では、キムチの薬味に塩辛を入れてコクを出すことが多い。ここで、母がニコッと笑って返した言葉に注目だ。

「서울깍두기 다 됐네?」(ソウルカクトゥギ ターデンネ)

 直訳すれば、「ソウルの大根キムチのできあがりだね」なのだが、この言葉がなかなか味わい深い。

釜山南浦洞のソルロンタン専門店、その名も『ソウル カクトゥギ』で出される大根の角切りキムチ(左)と、白菜キムチ(右)