「ソウル カクトゥギ」とは、地方出身者にとってかつては憧れの食べ物だったソルロンタンに添えられる大根の角切りキムチのことだ。この言葉は単に「ソウルのキムチに慣れてよかったね」ではなく、あんたも「すっかり都会人になったね」というニュアンスが含まれているのだ。

 都会人(ソウルっ子)になりつつある娘を頼もしく思うと同時に、自分の手から離れたことがちょっとさびしくもある。「都会に行ったからって人情を忘れるんじゃないよ」という、母からのメッセージも込められているかもしれない。PC画面越しとは言え、釜山訛りだからこそ、ぬくもりが感じられるのだ。

 ちなみにヒョンジュ役のチュ・ヒョンヨンは、釜山出身ではない。劇中で事務所の若い男性俳優コ・ウンギョル(シン・ヒョンスン)に、ヒョンジュが「私は釜山出身だから方言を教えてあげようか?」と言うシーンがあったが、実際に練習したのはチュ・ヒョンヨンだったわけだ。

ソルロンタンは、かつて地方からソウルに上京する人たち誰もが食べたがった料理だ。写真は釜山南浦洞の「ソウル カクトゥギ」のソルロンタン
釜山南浦洞の「ソウル カクトゥギ」は朝鮮戦争のときソウルから避難してきた女性が1955年に開業した店