一番の見どころは、スヒョンとジニョクが出会う1話目のシーン。舞台は、キューバの首都ハバナの夕景の名所として知られるカバーニャ要塞。城壁に腰掛けていた2人が夕陽に包まれる。スヒョンは、「感動が倍増する」とジニョクから勧められたキューバ人歌手オマーラ・ポルトゥオンドが歌う「Si llego a besarte(あなたにキスしたら)」を聞きながら、夕陽に色づいて自由に語り踊るキューバの人々に目を奪われる……。

 スヒョンのモノクロだった人生が初めて色づいた瞬間、心を閉ざしてきたスヒョンが初めて自分の目で世界を見た瞬間を、ドラマチックに映し出した旅韓ドラきっての名場面といえるだろう。とても大好きなシーンで、もう何度も観ているのに、毎回泣いてしまう。今回この原稿を書くために改めて観て、また泣いてしまった。

 たった数分のシーンだが、本作の演出を担当したパク・シヌ監督のインタビューによると、時間と人を最も投入し、撮影に4~5日も要したという。それも納得の仕上がりである。ドラマを視聴済の方も、もう一度観ると、また違った感動が得られるだろう。城壁に2人が座る韓国版の予告ポスターも、ロマンチックで一見の価値ありだ(ソン・ヘギョの真っ赤なワンピースと、パク・ボゴムの長髪の後ろ姿が効いている!)

 劇中では、ほかにも、ハバナの観光名所マレコンビーチ、クラシックカーが走る通り、チェ・ゲバラが書かれた壁、カラフルな壁の家々や古びた鉄道など、これぞキューバという風景をたくさん見せてくれる。ジニョクがふと邸宅の庭に迷い込んでしまうエピソードや、2人が行き違ったカフェで再会する展開も、これまた旅の一コマ!といった感じ。物語はほぼ韓国を舞台に進んでいくものの、こうしたキューバの場面がドラマの核心的な部分を担っていた気がする。

 本作は、一般的な韓国ドラマでは最初とラストに設ける海外ロケシーンが、最初と真ん中にあったのも変わっていた。その真ん中の10話目のタイトルを、DVD版では「リターン・キューバ」と名づけけているのを今回初めて知って、ちょっと頬がゆるんだ。

 残念ながら、まだキューバには行ったことはないのだが、『ボーイフレンド』を観てから、これから旅したい国の上位にランクインするようになった。海外ロケシーンは、主人公らの人生を変える重要なポイントとして用意されていることが多い。だからこそ強く印象に残り、旅心をもくすぐるのだろう。