日本人はつい、韓国を日本という国から眺めてしまう。日本は韓国を植民地にしたという歴史があるから、その発想により傾いていく。しかし地図を眺めると、韓国からの距離は中国のほうが日本より近い。いまは南北に分かれてしまったが、かつては国境を接し、韓国の王朝の歴史を読むと、中国から強い影響を受けたことがわかってくる。

 そんな中国、そして日本が、コロナ禍で明洞から消えた。その期間は2年以上にもなった。明洞では多くの店が存続を諦めることになった。

 ようやくウイルスが下火になり、韓国にやってくる観光客が戻りはじめた。明洞のいまは日本人の割合がかなり多い。街を歩いて見れば、耳にする日本語がその多さを裏づけている。しかし中国人の姿はない。中国は厳しいゼロコロナに舵を切った。その政策はうまくいかなかったのだが、ゼロコロナの発想はまだ尾を引いている。そして韓国の政権が変わった。日本、そしてアメリカに寄った尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権と中国の関係はあまりよくない。そのなかで中国人はいまだ明洞に姿を見せない。

 しかし明洞の店は日本語を看板に掲げない。じっと中国からの観光客を待っている空気が伝わってくる。

 だが、よく眺めると、コロナ禍の間に明洞は変わっていた。次回はそんな話を。(つづく)

最近訪れた明洞のドラッグストアー。中国語と日本語はない