……と、話がズレたが、本作のストーリーには、ほかの3作にはないファンタジー的な要素が入っている。
心臓移植をして健康な体になったフローリストのヘウォンは、ある日、登山の途中にアートディレクターのミヌと出会う。なぜかミヌに会うと胸が騒めくヘウォン。一方のミヌも、ヘウォンが亡き恋人と同じ言葉を発したことに驚き……というあたりから物語が始まる。
ネタばれは控えたいところだが、つまりは物語は“記憶する心臓”を中心に進んでいく。なかなか荒唐無稽ではあるが、韓ドラらしいピュアさがあふれる設定ともいえる。
本作は、シューベルトの「セレナーデ」の切ない旋律と夏の山や茶畑の風景が印象的だ。また、韓ドラにおいてロマンとか郷愁を誘うシーンに雨が使われるのは、「ソナギ」(夕立)という韓国の短編小説に由来しているといわれるが、本作でも雨が多用されている。特に最後の余韻が残る雨の場面は、四季シリーズで最も優れたラストシーンだと思う(うーん、『秋の童話』も捨てがたいけど)。
ただ、よいところもいろいろあるのだが、当時も指摘されていたが、主人公が過去に恋人を亡くしている点や、主人公とヒロインが仕事で会わざるを得なくなる設定など、前作の『冬のソナタ』にかなり似ている面があるのは否めない。ユン・ソクホ監督は後に「悪役をもう少し強いキャラクターにすればよかった」とも語っている。そういう意味でも4作の中で物語の印象が一番薄いように思う。
でも、悪役がそこまで悪くなくて、穏やかな展開のほうが、今っぽいラブストーリーのような気も。いったん、冬ソナのことを忘れて真っ白な気持ちで観れば、今の視聴者に最も受け入れられやすい四季シリーズの一作なのかも、とも思ったのですが、……どうでしょうか?
●放送情報
ホームドラマチャンネルにて「四季シリーズ」7月15日(土)より一挙放送
『秋の童話』7月15日(土)より毎週土曜18時30分~(4話連続放送)
『冬のソナタ』8月から放送スタート
『夏の香り』10月から放送スタート
『春のワルツ』11月から放送スタート
*「四季シリーズ」を手掛けたユン・ソクホ監督インタビュー、8月独占放送予定
公式サイト:https://www.homedrama-ch.com/