この寺から歩いて10分ほどの場所にある正門会館という食堂で黒ヤギのトッカルビ(韓国風ハンバーグ)と地鶏の炭火焼きを食べた。一口サイズに丸めた粗挽きのトッカルビは、噛むたびにジューシーな肉汁を楽しめる。醤油と酒で下味をつけた地鶏は、しっかりとした食感の肉質で、特に骨付きのもも肉の濃厚な旨味がたまらなく美味しかった。パンチャン(おかず)の中に順天ならではのイヌヤクシ草(コドゥルぺッキ)のキムチが並べられたのも嬉しかった。

黒ヤギのトッカルビと地鶏の炭火焼きはワイルドな肉の旨味を堪能できる

 そんな山の観光スポットとグルメを楽しめる一方で、順天の南東部には順天湾という海が広がる。

 湾に注ぎ込む東川(トンチョン)の川岸には22.6平方キロメートルの広大な干潟と5.4平方キロの葦(アシ)畑広がっている。冬にはコウノトリやマヅルなどの渡り鳥の飛来地でもある。そんな順天の干潟は、2021年7月にユネスコ世界自然遺産に登録された。

 東川を北へ遡ると「順天湾国家庭園」がある。2013年に韓国初の国際庭園フェスティバルとして開催された「順天湾国際庭園博覧会」のために造成された。10周年を迎える今年(2023年)には、それを記念して10月31日まで同博覧会を開催中だ。

 約28万坪の庭園内には、13種の世界庭園、16種のテーマ庭園などがあり、季節の花々と造園、夜間はイルミネーションとの共演を楽しめる。

「順天湾国家庭園」では10月31日まで「順天湾国家庭園博覧会」を開催中

 この庭園と順天湾湿地にある順天文学館の間にはスカイキューブという電気軌道車が運行されている。地上3.5~10メートルという高い位置から広大な湿原と葦畑を眺めることができ、自然の素晴らしさを目の当たりにできる。特に夕暮れ時に茜色に染まる順天湾は一見の価値がある。

電気軌道車スカイキューブで順天湾の湿地や葦畑を高い位置から一望できる

 ●順天へのアクセス

ソウル駅または龍山駅からKTX(韓国高速鉄道)で約2時間50分