■日本人の焼肉観を変えたサムギョプサル

 やわらかくて旨味が濃厚な豚肉を噛みしめているうちに思い出したのは、韓国文化を紹介する本を作り始めた1990年代末のことだ。

 1999年に取材したガイドブックの第1章「韓国料理をおいしく、かしこく食べる知恵」の第1項目、「安さと旨さなら豚焼肉 本当の肉好きは豚を好む」に、こんな一節があった。

『韓国人が焼肉を食べる機会が日本人より多いことは確かだろう。だが、その場合の焼肉とは牛肉ではなく、豚肉なのである。豚肉というと、牛肉の格下のように見られがちだが、韓国で豚の焼肉を体験したら、そのイメージが変わるに違いない。』

 当時、焼肉の本場という言葉をうのみにし、ソウルや釜山で牛カルビや牛ロースを食べたが、「肉は意外と固いし、そう安くもなかった」と言う日本人旅行者が多かったことから、安くて旨い豚肉をすすめたと記憶している。

 あれから23年。今やサムギョプサルは韓国料理のアイコン的な存在となり、焼肉=牛肉という日本人の固定観念を大きく変えた。

「マッチャンドゥル・ワンソグムクイ海雲台直営店」のサムギョプサル(130グラム)14,000ウォン。一緒に焼かれているのはセウジョッ(アミの塩辛)
切り分けられたサムギョプサル。断面の赤が食欲をそそるが、もう少しの我慢
食べ頃のサムギョプサル

(つづく)

取材協力:韓国観光公社