ありえない設定に対して自分がどう立ち向かうのか。

 韓国ドラマはいつも心地よい試練を与えてくれる。

 新しく始まった『ヒップタッチの女王』もそうだった。動物や人間の尻に触ると、それ以前の出来事が白黒の映像になって甦ってくる……という設定をどのように受け入れればいいのか。自分なりの課題を抱えながら先を見ていく展開となった。

■『ヒップタッチの女王』の「ありえない設定」の楽しみ方は? 実力派俳優ハン・ジミンイ・ミンギの熱演にハマる

 出だしは快調だった。ハン・ジミンが演じる高校生のポン・イェブンは、母が自動車ごと海に落ちて亡くなってしまったが、転校しても頼もしい同級生ペ・オッキ(チュ・ミンギョン)が「いじめっ子退治」をしてくれて無事に高校を卒業することができた。それにしても、女子高校生の役を自然にこなすハン・ジミンの若々しさには素直に感心した。

 結局、イェブンは叔母チョン・ヒョノク(パク・ソンヨン)に支えられて(祖父は異様に冷たかったけれど)、大学を卒業して獣医になることができた。

 その一方で、イ・ミンギが演じるムン・ジャンヨルが満を持して登場する。元はソウル広域捜査隊にいたエリート刑事。しかし、失態をおかして地方のムジン市の警察署に転勤となった。早く手柄を立ててソウルに戻りたいジャンヨルは、重大事件の犯人逮捕に躍起になるが、大事件だとにらんで血気にはやった途端に目撃したのは、暴走する牛の背中に恐くてしがみついているイェブンの「鬼の形相」であった。拍子抜けもいいところだ。のんびりしすぎている町の雰囲気にあきれ果てたジャンヨルの仏頂面がドラマの先々を暗示していた。

 こうして『ヒップタッチの女王』を楽しみ始めたら、とんでもない設定がやってきた。獣医としてイェブンが牛の腰回りを触診していたところ、自分をめがけて流れ星が突発的に落ちてきた。直後から3日間意識を失っていたイェブン。目覚めたら、特殊能力が身についていた。それは、動物や人間の尻に触ると直前のいろいろな場面が映像として見えてしまうというものだった。

 もちろん、イェブンは自分の特殊能力がまったく信じられないのだが、それは視聴者も同じだった。

「こんな設定はあり?」

 そんなふうに自問自答をしてみる。