確かに「タイムスリップ」や「輪廻転生」はありうる。この題材を使った傑作ドラマも多数存在する。結局はフィクション。ありえないことが平気で起きるのも、創作ドラマではよくあることなのだ。しかし、「尻を触ると過去の映像が甦る」という設定はいかがなものか。想像力の限界を超えすぎているのではないか、と。
一度はそう思ったが、その後の面白さが「ありえない設定」をいとも簡単に乗り越えていってしまった。
なにも難しく考えることはない。ハン・ジミンやイ・ミンギが大真面目に演じている各場面を素直に楽しめばいい。そうすれば『ヒップタッチの女王』に芯からハマっていくはずだ。
かくして、イェブンは特殊能力を獣医の仕事に生かして病院を大繁盛させていく。そんな彼女もジャンヨルの尻に触ったツケで彼から変態と呼ばれてしまった。いがみあう2人。しかし、転機が訪れた。イェブンの特殊能力が捜査に生かせると知ったジャンヨルは、むしろ積極的に彼女を利用しようとする。ソウルに戻ることしか考えていないジャンヨルにとって、イェブンは切り札になっていくのだ。
主人公2人を取り囲む周辺人物も興味深い。イェブンが惚れているコンビニ店員のキム・ソヌ(スホ/EXO)も何か裏がありそうだし、警察署の班長ウォン・ジョンモク(キム・ヒウォン)は難しい顔をしながら笑いのツボを刺激してくれるし、ペ・オッキは町の「女ボス」として騒動の火付け役になっている。
さらには、『二十五、二十一』のパロディ場面がたくさん登場したり『私の解放日誌』の話題が出てきたり、他の人気ドラマが露骨に引用されているのもどこか可笑しい。「何でもあり」の心地よさ。「どんどんやってくれ」という気分になる。しばらくは「何が起こっても驚かない」という気持ちを強く持って、イェブンが巻き起こす「ありえない設定」を堪能していこう。
●配信情報
Netflixシリーズ『ヒップタッチの女王』独占配信中
毎週日曜・月曜、新着エピソード配信
演出:キム・ソギュン『まぶしくて−私たちの輝く時間−』『私の解放日誌』 脚本:イ・ナムギュ『まぶしくて−私たちの輝く時間−』
出演:ハン・ジミン、イ・ミンギ、スホ(EXO)