ソウルの秋はことさら美しい季節だ。そのことは実感した人しかわからないかもしれない。車と騒音でやかましいのはいつも変わらないのだが、秋の「どこまでも青い空」と「どんどん色づいていく樹木」を間近に見ていると、「秋にこそソウルを訪れたい」と心から思えてくる。
そんな気分になったら、なおさら懐かしく思い出すのが昌徳宮(チャンドックン)である。「喧騒のソウル」の中でここには別世界がある。
特に「王宮庭園の真髄」と思えるのが秘苑(ピウォン)だ。後苑(フウォン)という名称のほうが世間に通っているかもしれないが、やはり秘苑のほうが自分にはしっくりする。「秘」という言葉の響きがあったほうが、この庭園の謎めいた美しさにふさわしい。
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最初に王宮の成り立ちを説明すると、1392年に朝鮮王朝が誕生した後、1395年から建設されたのが景福宮(キョンボックン)だ。ここが朝鮮王朝の正真正銘の正宮だった。
一方、1400年に3代王として即位した太宗(テジョン)が国王の威厳を示すために、1405年から建設したのが、離宮としての昌徳宮であった。とはいえ、昌徳宮はただの離宮ではなかった。景福宮が焼失したときには正宮として使われることが多かったのだ。
たとえば、景福宮が豊臣軍の攻撃の際(1592年)に焼失してからは、その景福宮が1865年に再建されるまでに昌徳宮は正宮として機能した時期がとても長かった。それゆえ、昌徳宮は景福宮に劣らないほど各施設が威厳と格式を持っていた。具体的に言うと、1412年に最初につくられて1608年に再建された敦化門(トンファムン)は、現存する最も古い歴史的な門となっている。
さらに、正殿の仁政殿(インジョンジョン)は正統派の伝統様式を受け継いでいて、中には玉座も設置されている。それでも建物全体に華美な装飾はなく、見ていて心が落ち着くほどに素朴で味わいがある。