何よりも、昌徳宮は建物が自然と調和するように配置されているところがとてもいい。その中でも、秘苑は「朝鮮王朝時代の自然美の極致」と称される場所だが、本来の地形がそのまま生かされており、自然を大切にしていた朝鮮王朝時代の美意識が伝わってくる。

 実際、秘苑ほど王宮の昔の佇まいを色濃く残しているところは他にない。その中心的な場所となるのが、「前に芙蓉池(プヨンジ)、後ろに宙合楼(チュハムヌ)」という配置になる一角だ。本当に絵になる風景を持っている。

 この宙合楼は22代王のイ・サンが政治改革の重要な場所としていた奎章閣(キュジャンガク)があった建物である。それだけに、イ・サンと彼が愛した宮女ソン・ドギムを描いたロマンス史劇『赤い袖先』で秘苑がロケ地になっていたのは、大いに納得できた。特に、宮女たちが芙蓉池の周囲を軽やかに歩くシーンは何度見ても心が優雅になってくる。

「また秘苑に行きたいなあ」

『赤い袖先』で芙蓉池や宙合楼が出る度に反射的にそう実感している。