ディズニープラス スターで配信中のドラマ『ムービング』が面白い。ジャンルとしてはSFアクションなのだろうが、物語を構成するエピソードひとつひとつが人情ドラマとしてよくできていて、SFであることなど半ば忘れて楽しんでいる。

 本作は意外性のある豪華キャスティングも魅力だ。今回は主要キャラに扮する俳優の魅力について紹介する。

■超話題作『ムービング』大人俳優たちの魅力を紹介

ハン・ヒョジュ(イ・ミヒョン/キム・ボンソクの母)

 ハン・ヒョジュは映画『セシボン』や『ビューティー・インサイド』での明朗快活な役の印象が強いが、『ムービング』での工作員のような役は、じつは映画『監視者たち』でソル・ギョングチョン・ウソン相手に経験済みだ。

 まだ30代半ばなのに、『ムービング』では高3の息子の母親を熱演。一人で切り盛りする食堂でのトンカス(とんかつ)屋の仕込みのシーンはなかなかレア。チョ・インソンとのロマンチックなラブシーンも見もの。

韓国トンカス(とんかつ)は肉をよく叩いて繊維を切り、薄くして揚げるのが特徴。『ムービング』ではミヒョン(ハン・ヒョジュ)がトンカスを下ごしらえして揚げるシーンが丁寧に描かれていた

●チョ・インソン(キム・ドゥシク/キム・ボンソクの父)

 40そこそこで50代リュ・スンリョンの先輩工作員役を演じているのだが、10代から俳優として活躍し、早くもベテランの風格があるので違和感はない。

『ムービング』は実在の地名が使われていて、序盤の登場人物はソウル江東区とその周辺が生活圏という設定だった。チョ・インソンはじつは江東区の千戸洞で高校まで暮らした人だ。

 強靭な肉体と繊細な心のアンバランスな演技に定評のある彼の代表作は、ヤクザの若頭に扮した映画『卑劣な街』や堕落検事を演じた映画『ザ・キング』。ドラマ『バリでの出来事』『その冬、風が吹く』『大丈夫、愛だ』など多数のヒット作でも活躍している。

息子の安全のためにドゥシク(チョ・インソン)とミヒョン(ハン・ヒョジュ)が天井に貼った緩衝材を見て思い出したのは、ある時期、全州で一番人気だったマッコリ酒場の天井(写真)。そこには卵を梱包する緩衝材が貼られていた

●リュ・スンリョン(チャン・ジュウォン/チャン・ヒスの父)

 娘思いのチキン屋の主人役を見て、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で海苔巻き屋を開業したヨンウのお父さんを思い出した人も多いはず。リュ・スンリョンは大ヒット映画『エクストリーム・ジョブ』でもチキン屋主人を演じているので、ニヤッとした人も多いのでは。超能力で社会弱者を守るという役柄も映画『サイコキネシス 念力』で経験済みだ。

 コミカルな役とシリアスな役の両方を違和感なく演じることができる俳優。前者の代表作が前述の映画『エクストリーム・ジョブ』や『7番房の奇跡』。後者の代表作が映画『熱血男児』だ。

専門店のフライドチキン。韓国では手っ取り早く日銭を稼ぐ商売として一時期、フライドチキン開業が流行った