傑作時代劇『赤い袖先』では、ジュノ(2PM)が扮したイ・サン(朝鮮王朝第22代王・正祖)とイ・セヨンが演じた宮女ソン・ドギムが、最後まで心に残る王宮ロマンスを披露してくれた。
また、イ・サンの国王即位後の名君ぶりをジュノが見事に演じていて、イ・サンの人物像と業績に関心を持った視聴者が多かったようで、改めてイ・サンという名君の生き方に注目が集まった。(以下、一部ネタバレを含む)
■『赤い袖先』で2PMジュノが演じた名君イ・サン、史実ではどのような最期だったのか?
ドラマの中でソン・ドギムは愛するイ・サンに看取られて命を終える展開になっていて、彼女の臨終の場面は涙なくしては見られないほどの哀切があった。
ドラマから史実の世界に入ってみると、イ・サンの最期はどのような状況だったのだろうか。『朝鮮王朝実録』で詳しく記されているので、その場面を再現してみよう。
1800年6月になってイ・サンのからだに異変が起きた。大きな腫れ物ができ、熱も高くなった。陰暦の6月といえば真夏である。猛暑の中で徐々にイ・サンが衰弱していった。
そんな状況でありながら、イ・サンは薬を調合する現場を自ら視察している。
薬について詳しかったこともあるが、むしろ毒殺を警戒する気持ちが強く働いていたことが視察の理由だったと思われた。しかも、医官から「患部をお見せください」と要請されても当初は断っていた。それどころか、わざわざ地方の名医を呼び寄せて診察を受けている。医官を信用していなかったことは明らかだ。
イ・サンは体調悪化にもかかわらず、常に毒殺されることを警戒し続けていた。こうした事実を見ても、王宮の中でイ・サンが緊張状態の中で暮らしていたことがうかがえた。
6月21日、イ・サンが苦痛を吐露した。
「痛みがあって苦しい。熱があるのに寒けがする。意識が朦朧(もうろう)としてきた。夢を見ているのか目覚めているのか、まったくわからない」
ここまで病状が深刻なのに、イ・サンは相変わらず医官に患部の腫れ物を見せなかった。しかし、重ねて医官に説得されて、ようやく患部を見せるようになった。それでも、医官に対する不信感は払拭できていなかった。