6月27日、医官がイ・サンを診察して「脈が弱いようです」と述べた。イ・サンは「食欲がますますなくなっている」と細い声で言った。

 6月28日、左議政(チャイジョン/副総理に該当する)の沈煥之(シム・ファンジ)が「夜間におからだの状態はいかがでしたか」と尋ねた。

 イ・サンは「少しだけ眠った」と答えた。すかさず、そばにいた医官が尋ねた。

「夜間に何か召し上がったものはありますか」

 イ・サンが「ない」と答えたので、医官が人参茶を用意した。それをイ・サンがゆっくりと飲んだ。

 医官が「脈をお取りになったらいかがでしょうか」と言うと、イ・サンは「病のことをすべて知っている医官がどこにいるというのか」と不機嫌に言った。

 改めて医官が煎じ薬を持ってくると、イ・サンは尋ねた。

「誰が作ったものなのか」

「姜最顕(カン・チェヒョン)が作りましたが、多くの医官が相談して決めました」

「5匁(もんめ/3・75グラム)くらいか」

「人参が3匁入っています」

 ここで『朝鮮王朝実録』のイ・サンの症状に関する記述が終わり、その日に彼は世を去っている。記録だけを見ると、イ・サンの臨終の言葉は「5匁くらいか」ということになる。

 享年は48歳であった。彼にとって政治改革への意欲が高まっていた時期だったので、国王としてはやり残したことが多くて無念だったはずだ。それでも、愛するソン・ドギムより14年も長く生きている。人間イ・サンとしては十分に生を全うしたと言えるかもしれない。

●作品情報

『赤い袖先』

[2021年/全17話]※日本編集版のTV放送は全27話、DVDレンタル及び配信は全36話

演出:チョン・ジイン、ソン・ヨナ 脚本:チョン・ヘリ

出演:ジュノ(2PM)、イ・セヨン、カン・フン、イ・ドクファ

DVD&Blu-ray販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン