■1400万人以上を動員した大ヒット作!『国際市場で逢いましょう』(ユン・ジェギュン監督/2014年)

 朝鮮戦争(1950~1953年)のときに北側の故郷で父と生き別れになり、母や弟妹とともに釜山に避難。ファン・ジョンミン扮する長男ドクスは身を粉にして働き、母を助け、弟をソウル大にやり、妹を嫁がせた。若い頃のドクスは、『最後の狼』や『ユア・マイ・サンシャイン』から始まった純情青年キャラの完成形といえる。

 そして、年老いてからの気難しく怒りっぽいドクスは、その後のタフガイ(『ベテラン』)、怪人(『哭声/コクソン』)、恐怖支配者(『アシュラ』)、二重スパイ(『工作 黒金星と呼ばれた男』)のように守備範囲の広がりを予感させる演技だった。

釜山タワーから見下ろした国際市場のアーケード

 韓国で大ヒット中の映画『ソウルの春』というタイトルは、1979年10月26日の朴正煕大統領暗殺から1980年5月18日の光州民主化運動過剰鎮圧の前までを指している。『国際市場で逢いましょう』でいえば、ドクスが新たに国際市場に雑貨店を構えた頃だろうか。

 北側で生き別れになった上の妹の行方を汝矣島の国会議事堂前で探したのは『ソウルの春』の3年後だ。描かれた時代が重なる別々の映画を、同時代のパズルを完成させるように結び付けてみるのも、韓国映画の楽しみ方かもしれない。

 今の韓国映画界のトップは? と問われたら、多くの韓国人が「ソン・ガンホ」と答えるだろう。そして、主演作3本が観客動員1000万人を超えたファン・ジョンミンは、文句なしにポスト「ソン・ガンホ」の筆頭といえるだろう。