ファン・ジョンミンチョン・ウソン主演映画『ソウルの春』が、韓国での公開から1カ月ちょっとで観客動員1000万人を突破した。日本でも2024年の公開が決まったが、この映画、日本の人には少々予習が必要になりそうだ。それについては公開日が決まってから書くことにしよう。

 今回は歴史上の実話をエンタテインメントとして成立させた役者、ファン・ジョンミンとチョン・ウソンのおすすめ主演映画とその演技の見どころについて書こうと思う。

 まずは本作の快挙によって、主演作3本が1000万人動員を果たし、3度目の千万俳優(チョンマンベウ)となったファン・ジョンミンについて。

■二十歳のファン・ジョンミンに会える『将軍の息子』(イム・グォンテク監督/1990年)

 1990年に観客動員1位を記録した大ヒット作『将軍の息子』。韓国が日本の植民地だった1930年代の鐘路(チョンノ)での日本人と朝鮮人の対立が描かれている。

 ファン・ジョンミンは、朝鮮の侠客たちがたむろするキャバレーの若い支配人役。コワモテの客にへいこらしたり、どつかれたり、ホステスどうしのケンカの仲裁をしたりする役なのだが、その人間味のある演技は殺伐とした物語にとぼけた味わいを添えていた。のちに多くの映画で主役を張る今の彼を彷彿とさせる。映画デビュー作にしては出番が多く、名匠イム・グォンテクは早くもファン・ジョンミンの才能を見抜いていたかのようだ。

 なお、『将軍の息子』は、「韓国映像資料院(한국고전영화 Korean Classic Film)」のYouTubeで無料視聴できる。当時、20代前半だったシン・ヒョンジュンやキム・スンウも出ているので、ぜひ観てほしい。

チョン・ドヨンとの競演で存在感を示した『ユア・マイ・サンシャイン』(パク・ジンピョ監督/2005年)

 当時35歳のファン・ジョンミン扮する農村の純情青年と、当時32歳の大物女優チョン・ドヨン扮するわけあり風俗嬢のラブストーリー

 最初はぽっちゃりしていた純情青年が恋わずらいで激やせしていくシーンや、愚直を通り越して美しさすら感じさせた求愛シーンが韓国人の心を大きく揺さぶり、300万人以上を動員した。ナ・ムニ扮する息子思いの母親との壮絶なやりとりも印象深い。この映画でファン・ジョンミンは青龍映画賞の主演男優賞を受賞した。

 この映画で韓国人の涙をしぼったファン・ジョンミンとチョン・ドヨン。二人はこの17年後、漢江の東湖大橋の上で再会し、片や日本刀、片や斧を手に対峙する。Netflix映画『キル・ポクスン』(2023年)の冒頭シーンだ。二人の演技の振れ幅を楽しむ意味でも併せて観てほしい。

ソウル鐘路3街のCGVピカデリー1958の地下に掲示されているHALL OF FAME。チョン・ドヨンは2000年代のスターとして。ファン・ジョンミンは2010年代のスターとして名を連ねている