■心を溶かす酒

 友情や愛情を確かめる酒としてソジュが飲まれた例としては、日本をはじめアジア各国でリメイクされた映画『サニー 永遠の仲間たち』(2011年)を思い出す。1980年代の女子高校生の話だ。

 主人公ナミ(シム・ウンギョン)は同じチームのスジが自分を避けているのが気になり、夜、スジの家に押しかけて連れ出し、ポジャンマチャでおでんをつまみながらソジュを飲む。すでに3本目にさしかかっている。

 スジ「私はあんたが嫌い」

 ナミ「でも、私はあんたが好き。美人だもん」

 どういうわけか抱き合って泣き出す二人。感極まったスミは、「アジュンマ、眞露もう一本!」と4本目を頼む。大変コミカルだが、当時25度はあったソジュが心を溶かし、気持ちを解放させることを象徴するシーンだ。また、気取った店でなく、ビニールテントの屋台なのも似つかわしい。

釜山の富平カントン市場南側のポジャンマチャ

■熱いキスはソジュの味

 大衆酒であるソジュはラブシーンには似合わないと思うかもしれないが、そんなことはない。

ソウルの春』『愛していると言ってくれ』のチョン・ウソンと、『愛の不時着』のソン・イェジンラブストーリー私の頭の中の消しゴム』(2004年)の前半。夜、ポジャンマチャで横並びに座った二人がソジュを飲むシーンがある。鐘路3街にあるような屋台街ではなく、道端にぽつんと一軒ある店だ。

 カンツォーネらしき音楽をバックに、男から女のグラスに注がれるソジュ。透明な液体が波打ち、やがてあふれる。

「これ飲んだら、おまえはオレの彼女だ」

「飲まなかったら?」

「二度と会わない」

 喉を隆起させながら流し込む女。口元からこぼれるソジュを拭おうともしない。男はそこに唇を重ねる。
韓国映画史に残るソジュの名場面であり、ポジャンマチャの名場面だ。泡立つビールや白濁したマッコリはキス向きではない。

 日本のみなさんにも、ドラマや映画のシーンごとにさまざまな役割を果たす表情豊かなソジュを見直してもらいたい。

釜山の飲食店の冷蔵庫。上段左から眞露、チョーウンデイ。下段中央からチャミスル、セロ