韓国では今も人づきあいには酒がつきものだ。ひとむかし前と比べれば、飲酒や飲み会参加を無理強いすることは少なくなったが、人間の本音が出やすい飲酒は物語を大きく展開させるので、ドラマや映画によく登場する。
今回からソジュ(焼酎)、メクチュ(ビール)、マッコリなど、酒類別の劇中の役割について見てみよう。1回目はチャミスルや眞露をはじめとする韓国の代表酒、ソジュの話題。
■しっかり酔うための酒、ソジュ
私が日本に留学していた1990年代後半、日本ではチューハイなどソフトドリンクで割った酒が主流で、強い酒と言ったら焼酎ロックくらいだったと記憶している。今のように韓国のソジュが日本のコンビニやスーパーに並ぶようになったのは、ここ数年の『梨泰院クラス』をはじめとする配信ドラマの影響なのは明白だ。
ソジュは1960年代から現在までアルコール度数が30度→25度→20度前後→17度前後と下がってきているが、ソフトドリンクなどで割らずにストレートで飲むのが基本なので、いまだに強い酒である。言い換えれば、ちゃんと酔いたいとき飲む酒だ。飲食店なら1本(360ml)4,000~5,000ウォンで、お腹いっぱいにならず、安く酔える。
そのため、ドラマや映画に登場するソジュは、うさばらし、友情や愛情の確認、やけ酒などの場で飲まれることが多い。
最近の例では、Netflixドラマ『サムダルリへようこそ』1話で、仕事上のトラブルで打ちのめされたサムダル(シン・ヘソン)が飲み屋のカウンターで一人ソジュを4本近く空けるシーンが記憶に新しい。その後の回でも、サムダルとチョ・ヨンピル(チ・チャンウク)ら友人たち、家族たちが、様々な思いを抱えてソジュやメクチュを飲むシーンが何度も登場した。
■マイナスイメージがつきまとうソジュ×一人酒
そもそも韓国では、一人酒のイメージはあまりよくない。ここ数年、一人酒を意味する「ホンスル」という言葉が定着し、都市部ではそれまでけっして多くはなかったカウンターを備えた酒場が増え、一人酒を見かけることも珍しくなくなった。
それでも、いまだに一人酒と聞くと、市場の食堂やポジャンマチャ(ビニールテントの屋台)で中高年男性が背中を丸め、ぶつぶつ言いながら飲んでいる姿を想像する人は少なくない。
私がよく行くソウルの大衆酒場でも、常連でもない男性客が一人で店に現れソジュを頼み、店の女将が明らかに警戒している様子を何度も見たことがある。まあ、この場合、そういう客の多くがすでに酔っているせいもあるのだが。