Netflixで配信され、SNSで連日トレンド入りするなど、日本でも大きな人気を集めている『涙の女王』。『愛の不時着』の脚本家の新作ということで放送前から期待されていた本作だが、予想を上回るストーリーの面白さ、魅力的なキャラクターと俳優たちの好演で、韓国tvN局放送の最高視聴率は『愛の不時着』を超えた。

 一途に妻を支えるペク・ヒョヌを演じたキム・スヒョン、基本ツンだが実は夫にぞっこんの妻ホン・ヘインを演じたキム・ジウォン、2人のケミストリーは韓ドラ史上に残る名カップルを生み出した。

 最終回を終えたいま、キム・スヒョン ロス、ペク・ヒョヌ ロス状態の人も少なくないだろう。そこで、あらためて『涙の女王』でもっとも涙を流した男、ペク・ヒョヌの魅力を解き明かしてみる。(以下、ネタバレを含みます)

■『涙の女王』ペク・ヒョヌは、リアルとファンタジーが共存した男!

『涙の女王』主人公ペク・ヒョヌの魅力は、リアルとファンタジーの共存にあったように思う。劇中、彼の妻ホン・ヘインはこう言う。

「その顔と声で、ロースクールを首席卒業。ボクシングのチャンピオンで、海兵隊の特別警護隊出身。すべて兼ね備えているなんて、私をだましているのか」と。

 要は、イケメンで、頭脳明晰、運動神経もいい。とにかく完璧な男だ、と。

 加えて、スーツが似合い、シャツをまくり上げた腕の筋肉ときたら! ヘインの理想中の理想だったわけだ。

 さらに、幼い頃に彼女の命を救った「運命の人」でもある。現実ではありえないほど、“ファンタジーな男”なのだ。

 だが、実際のペク・ヒョヌは、のどかな田舎の村でスーパーを営む親のもとで育ち、どちらかといえば素朴系。決して洗練されているわけではない。

 ソウル大出身であることをちょいちょい自慢してみたり、ヘインを勝手に貧しい家の娘と勘違いしたり、ちょっと空気が読めないところがあったり、妻の実家で肩身の狭い思いをしていたり、ストレス発散のためにバッティングセンターに通いひたすら球を打ち返していたり、酔って友人に結婚生活の不平不満を愚痴ったり、亡き我が子の出産予定日を部屋の暗証番号にしていたり、「世の夫あるある」を体現したような、等身大の姿を露呈しまくっている。

 つまり、ペク・ヒョヌとは、スペックこそ完璧だけれども、世の中の夫たちと同様、夫婦間の些細な悩みを抱え、ストレスを溜めている。その、ちょいダメ設定が、どうにも愛おしく、目が離せないポイントだった。

 そして、彼はなんだかんだと言いながら、妻のヘインに一途だった。離婚が決まったあとも、彼女の苦しみに気づいてあげることができなかった自責の念に暮れ、彼女のために涙する。

 ヘインが倒れたと聞けば、我を忘れて駆けつける(革靴で走り、滑って転びそうになりながらも)。そんなヒョヌの姿を見たヘインの叔母ボムジャが、「こんな元夫がほしい」と思わず口にする場面があったが、激しく同意したほどだ。

 そんなわけで、ホン・ヘインをはじめ、世の女性たちがペク・ヒョヌに恋したのは、スペックが完璧な点ではなく、愚直なほど妻に一途な点だったと思う。

 事実、ヘインが残したメモには、ヒョヌについて「酔った姿は可愛く、泣く姿は母性本能をくすぐる」と書かれてあった。彼のスペック以上に、その人柄、人間性に惚れていた証拠だろう。