■韓国人が辛いものを欲する時

 私たち韓国人は精神状態が「喜怒哀楽」の「怒」のときに、辛いものを欲しがちだ。仕事や学業のストレスでむしゃくしゃしたとき、二日酔いのとき、身体がだるいとき。科学的根拠は乏しいが、辛いものを食べて身心をリセットしたくなる。その延長線だと考えれば、 “悪魔の晩餐” に真っ赤なユッケジャンは似つかわしいのかもしれない。

“悪魔の晩餐” で思い出した映画がある。『哭声/コクソン』で日本でも知名度を上げたナ・ホンジン監督の『哀しき獣』だ。

 この作品は、ハ・ジョンウ扮する中国朝鮮族の主人公が、ある忌まわしい目的のために潜入したソウルで逃亡生活を強いられ、その行く先々で間に合わせの食事をするシーンが印象的だった。

 また、その敵役のならず者(キム・ユンソク)と手下が、骨ごと煮た牛の脚に無言で食らいつく場面はさらに強烈で、まさに “悪魔の晩餐” と呼ぶにふさわしいものだった。

映画『哀しき獣』に登場したような牛の脚にはなかなかお目にかかれないが、イメージが近いのが写真のようなカムジャタン(豚の背骨肉とジャガイモの鍋)