Netflixで配信中の新作映画『クロス・ミッション』は、映画の楽しさを思い出させてくれる作品だ。主人公は夫婦で、妻カン・ミソン(ヨム・ジョンア)は敏腕刑事。夫パク・ガンム(ファン・ジョンミン)は専業主夫だが、じつは彼は情報司令部の特殊要員出身だ。しかし、刑事の妻はそれを知らない。そんな二人が複雑な事件に巻き込まれてしまう。

 クライム・サスペンスでありながら、笑いどころも満載のこの映画の見どころと、主演ファン・ジョンミンの魅力を探ってみよう。

■Netflix映画『クロス・ミッション』主演ファン・ジョンミンのコミカルな魅力

 長い年月、韓国の映画やドラマを観ていると、ふとした瞬間に俳優の上がり目や下がり目を感じてしまうことがある。『クロス・ミッション』を観たとき、まず感じたのは、ファン・ジョンミンは、『サムシクおじさん』でやや失速した感のあるソン・ガンホを超えたのではないかということだ。

 こうした瞬間は突如やってくる。1990年代後半から2000年代にかけて大活躍したハン・ソッキュが『二重スパイ』で失速し、ソン・ガンホが『JSA』や『殺人の追憶』で台頭したときもそうだった。

 工作員であれ、ヤクザであれ、腕の立つ者が市井の人々に紛れて暮らす役は、ソン・ガンホも経験している。家族思いのヤクザを演じた『優雅な世界』、韓国側の工作員であることを隠したつもりで北朝鮮側の工作員(カン・ドンウォン)と同居する『義兄弟 SECRET REUNION』、料理教室に通う元ヤクザを演じた『青い塩』などだ。いずれもソン・ガンホの人間味のある演技が好感をもって受け入れられた佳作である。

 だが、ファン・ジョンミンは『クロス・ミッション』一本で、それらを超えてしまったように見える。

Netflix映画『クロス・ミッション』独占配信中

■遊び心いっぱいの痛快娯楽活劇

『クロス・ミッション』はクライム・アクションだが、緊張感の中に遊びのスパイスが効いていて、ところどころで爆笑必至。映画は娯楽であるという信念が貫かれている作品だ。

 詳述は避けるが、酔った妻カン・ミソン(ヨム・ジョンア)がハンディカラオケで熱唱する場面、夫パク・ガンム(ファン・ジョンミン)の浮気現場を部下たちが再現する場面、妻が夫のスマホを盗み見する場面、妻が夢遊病のふりをする場面、夫が業者に化けて敵陣に侵入する場面など、爆笑必至なので、通勤通学の電車の中では観ないほうがよいだろう。

 また、ソウルの都市伝説のようなネタも盛り込まれている上、ファン・ジョンミンの過去の出演作がらみのくすぐりもあるので注意深く観てほしい。

 また、アクション映画に欠かせないカーチェイスのシーンは、カン・ドンウォン主演『新感染半島 ファイナル・ステージ』のそれに匹敵する迫力だ。なにより夫が戦闘用に選んだ特殊車両のインパクトがすごい。

ファン・ジョンミン扮するガンムが乗り込んだ敵のアジトは、南山タワーの地下にあるという設定だった