韓国の仁川国際空港から無料のシャトルバスのAICC(空港管制センター)行きに乗って約5分。ハヌルガーデン(ハヌル庭園)というバス停で降りた。ハヌルは韓国語で空の意味。ハヌル庭園は空庭園ということになるが、空港庭園といってもいいと思う。
■仁川国際空港でのトランジット時間、近くのハヌル庭園に行ってみると……
バス停で降りたとたん、迫る轟音に空を見あげた。着陸する飛行機が高度をさげて近づいてきたのだ。やがて僕の頭上に達し、その音に思わず首をすくめた。仁川国際空港の脇にある公園なのだ。
飛行機が通りすぎ、滑走路にタッチダウンすると、急に静かになる。7月の下旬だというのに、虫の声が聞こえてくる。そういえば、この庭園は秋のススキで有名なのだという。しかしいまはその時期にもなっていない。
なんとなく茫漠とした庭園が広がっているだけだった。
さて、どこへ行こうか。
案内板を見ると、展望台290メートル、風の丘120メートルなどと書かれている。風の丘に行こうかとも思ったが、空模様が怪しかった。いまにも雨が降りそうなのだ。
「展望台の下なら雨をしのげる?」
庭園内の地図に沿って展望台に向かった。
庭園には誰もいなかった。通路は雑草がかなりのびている。そこに前夜からの雨が溜っている。それを避けるように草原を進むと櫓のようなものが見えてきた。展望台のようだった。
展望台の最上階までのぼった。曇天を見あげる。すると左手に小さな光が見えた。星のようだったが、そんな時間ではない。しばらくその光の方向に目を凝らしていると、やがて黒い点になり、それが少しずつ大きくなってくる。飛行機だった。
バス停で頭上を滑走していった飛行機を見あげてから10分もたっていない。もう、次の飛行機が着陸しようとしていた。
やがて飛行機は高度をさげ、展望台から機体のボディの文字を見ることができる距離になった。韓国のLCCであるティーウェイ航空だった。到着するのは国際線ターミナルである。どこかアジアの国から戻ってきたのだろうか。