南北分断は韓国が直面する深刻な問題だ。2000年には、平壌で南側の金大中大統領と北側の金正日国防委員長の頂上会談が実現し、統一の機運が高まったが、その後、それぞれの国情によってくっついたり離れたりを20年以上繰り返し、統一にリアリティを感じる人は少なくなりつつある。
■南北分断をテーマにしたヒット作品
一方、統一の是非などの思想とは別に、南北分断はエンタテインメントのモチーフになりやすく、南北分断ものは多くのヒット作を生んでいる。
キム・ユンソク主演『モガディシュ』(2021年)。ファン・ジョンミン主演『工作 黒金星と呼ばれた男』(2018年)『国際市場で逢いましょう』(2014年)。ヒョンビン&ユ・ヘジン主演『コンフィデンシャル/共助』。チョン・ウソン主演『鋼鉄の雨』(2017年)。ソン・ガンホ&カン・ドンウォン主演『義兄弟 SECRET REUNION』(2010年)。チョン・ジェヨン主演『トンマッコルへようこそ』(2004年)。ウォンビン&チャン・ドンゴン主演『ブラザーフッド』(2004年)。ソル・ギョング主演『シルミド』(2003年)。イ・ビョンホン&ソン・ガンホ主演『JSA』など、スター俳優がかならず通る道といえる。
1999年に韓国で公開され、600万人以上を動員した『シュリ』は、これらの先駆けとなった南北分断映画の傑作だ。
■南北分断映画の傑作『シュリ』、北側にチェ・ミンシク、南側にハン・ソッキュ、ソン・ガンホ、ファン・ジョンミン
『シュリ』のキャストは、韓国に侵入した特殊部隊員パク・ムヨンにチェ・ミンシク、それを迎撃する治安部隊員ユ・ジュンウォン(主人公)にハン・ソッキュ、同僚のイ・ジャンギルにソン・ガンホが扮している。
チェ・ミンシクは主人公の敵役だが、1989年の映画デビュー以来の好青年イメージを引きずっていたうえ、8キロ以上減量して撮影に臨んでいるので、『オールド・ボーイ』(2003年)以降の怪人キャラを見慣れている人には新鮮に映るだろう。
ハン・ソッキュは今の日本ではベテラン俳優の一人程度にしか認識されていないかもしれないが、1990年代後半から2000年代初頭は、”興行の保証手形”とまで呼ばれた大俳優だ。本作での銃撃戦シーンのリアリティや北側の女性を愛してしまった苦悩の表現を見れば、その抜きん出た演技力に敬服するはずだ。
ソン・ガンホは1997年公開の『グリーンフィッシュ』のチンピラ役で注目を集め、『シュリ』に抜擢。その後、初主演作『反則王』や南北分断映画『JSA』を経て、ハン・ソッキュとバトンタッチするようにトップの座に登り詰めた。本作ではコミカルなシーンがほとんどない二枚目的な役で、観ていて少々くすぐったいが、痩せていると東アジア的美男であることがわかるだろう。