最低賃金の上昇のなかで、韓国では無人店が増えている。軒数からいえば、無人カフェがいちばん多いだろうか。

 店員がいないから、支払いはカードということになる。しかしそこで外国人は、韓国のクレジットカード問題に出合ってしまう。

ソウルの無人店で困った……僕のクレジットカードを受けつてくれない

 ソウルの江南にあった一軒の無人カフェに入った。タッチパネルで注文し、僕のクレジットカードを挿入口に入れた。しかし反応はなく、カードは戻ってきてしまった。しかし一緒にいた韓国人の知人のクレジットカードを入れると、すっと清算。カードの問題だった。

 韓国は日本をはるかに凌ぐカード社会である。韓国の人のなかには、現金を一切持たずに家を出る人も少なくないという。韓国では店舗を開くとき、クレジットカードに対応できることが条件だと聞いたことがある。地方都市のおばあさんが切り盛る食堂もクレジットカードに対応しなくてはなからない。

 しかしそれは韓国人に限ってのことだ。外国人旅行者の立場になると、その環境は少し変わってくる。

 韓国で飲食店に入る。支払いに外国人もクレジットカードを使うことは珍しくない。キャッシャーで店員さんにクレジットカードを渡す。店員さんは端末にクレジットカードを挿入する。日本ではつづいて暗証番号を入力することになる。

 しかし韓国は違う。暗証番号の代わりにサインになる。端末機にある小さなペンタブレットのスペースに、横に差し込んであるペンでサインをする。

 もう何回となくサインをしてきたが、それがかなりいい加減だ。ササーとサインらしき文字を書くだけでOKが出てしまう。あるとき、僕の両手がふさがっているところを見た同行の韓国人が、

「僕がサインしておくよ」

 とペンでなにやら書いていた。それで通ってしまうのだ。

「それでいいの?」

 と訊くと、彼はあたり前のことのように頷いた。サインを認証してはいないと思う。なにかが書かれればそれでOK……。だから韓国でクレジットカードを盗まれると大変なのだという。サインは誰が書いても通ることが多いから、店で自由に使われてしまうのだ。

 しかしこれは飲食店などのキャッシャーでの話。今回、支払いができなかった無人店では話が変わってくる。無人店ではカードの挿入口があるだけで、サインを書き込むスペースもなかった。暗証番号を打ち込む端末もない。

 飲食店では目の前に店員さんがいる。しかし無人店は誰もしない。それによって認証システムに違いが出てくるのだろうか。そのあたりがわからない。韓国人がもっているクレジットカードは、サインもせずに支払いは終わった。額が少なければ認証を省略しているということなのだろうか。