昨年、還暦を迎えたベテラン俳優ハン・ソッキュ(1964年生まれ)が、主演ドラマ『こんなに親密な裏切り者(原題)』で「2024 MBC演技大賞」を受賞した。

 人気シリーズ『浪漫ドクター キム・サブ』の天才外科医役や、傑作時代劇『根の深い木-世宗大王の誓い-』の王・世宗役などで韓流ファンにも広く知られているハン・ソッキュ。

 今回の新作『こんなに親密な裏切り者』では犯罪分析家に扮している。容疑者である自分の娘(チェ・ウォンビン扮)との繊細な心理描写が見どころで、日本では3月から放送予定だ。

■30代のハン・ソッキュ出演作、映画『グリーンフィッシュ』を観るべき3つの理由とは?

 1988年のソウル五輪の頃から韓国に興味をもった日本人にとって、ハン・ソッキュは先輩格のチェ・ミンシクとともに日本に韓国の空気を伝えてくれた重要な存在だ。今回のMBC演技大賞受賞を機にハン・ソッキュの主演作をいくつか観直してみた。

 なかでも出色は、名匠イ・チャンドン監督のデビュー作で、純情青年が裏社会に転落していく映画『グリーンフィッシュ』(1997年)。今から28年も前の作品だが、現在も活躍している俳優が多数出演していて、ハッとすることが多かった。今回はその一部を紹介しよう。

現在のCGVピカデリー1958(旧・ピカデリー劇場)には、HALL OF FAMEとして時代ごとに活躍した俳優の写真が掲示されている。ハン・ソッキュ(中段左から5人目)もその一人

■【理由1】1990年代を代表する女優シム・ヘジン扮するヒロインにからむ役に、イ・ムンシクやチョン・ジェヨン

 除隊した主人公(ハン・ソッキュ)が、京畿道・一山(イルサン)の実家に帰る列車の中で出逢ったクラブ歌手に扮したのは1990年代を代表する女優シム・ヘジン。

私たちのブルース』のチャ・スンウォン主演映画のなかでも評価の高い『約束』(2006年)で、チャ・スンウォン扮する脱北者の妻を演じた女優と言えばピンとくるだろう。長い手と脚が美しく、はつらつとした演技も魅力だが、どちらか言うと本作のような暗い影のある役がハマる女優だ。1990年代だけで20本以上の映画の主役や準主役を演じた時代の顔である。

 また、列車内でシム・ヘジン扮するクラブ歌手をからかう不良青年(白いシャツ)に、のちに映画『フライ、ダディ』やドラマ『イルジメ一枝梅』でイ・ジュンギの相棒や父を演じるイ・ムンシク。

 ナイトクラブで歌手(シム・ヘジン)に因縁をつけ、用心棒(ハン・ソッキュ)に殴り倒された客に、のちに映画『トンマッコルへようこそ』やホン・サンス監督作品、ドラマ『ジャスティス-検法男女-』などで活躍するチョン・ジェヨンが扮しているのにも注目だ。

■【理由2】大ヒット作『涙の女王』でキム・ジウォンの父を演じたチョン・ジニョンが、主人公ハン・ソッキュの兄役

『グリーンフィッシュ』前半の見どころのひとつが、除隊した主人公がチョン・ジニョン扮する卵売りの兄が運転するトラックに同乗するシーン。兄はスピード違反で反則キップを切られそうになったのでワイロを渡すが、1万ウォン札しかないので「おつり」をくれと言うも警官に逃げられてしまう。それに怒り、スピーカーで罵倒しながらパトカーをあおる痛快な役だ。

 チョン・ジニョンは、大ヒット作『涙の女王』でキム・ジウォン扮するヒロインの父親である財閥社長を演じていたが、その役とのギャップを大いに楽しんでほしい。

『涙の女王』では、都落ちした財閥社長がキム・スヒョン扮する主人公の実家でマッコリをふるまわれたり、情けをかけられたりした。そんなときのチョン・ジニョンの人間味ある演技の原点がここにある。