もうひとつ気になることがあった。25度という温度設定である。日本の場合、冬の部屋の設定温度はたいてい20度である。これは環境省が推奨している温度でもある。ところがソウルは25度。話を聞いた知人たちも皆、25度に設定していた。たしかにソウルは寒い。しかしそれは戸外の話。室内は違う。

 最近のソウルのホテルなどの宿では、床暖房がなく、エアコンのみというところもある。そこでは僕も20度……いやはじめは25度ぐらいにして、部屋が温まってくると、温度をさげていく。25度はやや暑い。

 エアコン暖房と床暖房は部屋の温まり方が違うのだろうか。暖房効率を考えれば、床暖房のほうが勝っているはずだ。そこで韓国の人は25度に設定する。

「アメリカですよ」

 ひとりがそういった。部屋をがんがん温めて、室内ではTシャツ1枚。寝るときも薄いかけ布団……それがかっこいいというか、豊かさを享受する暖房になったのだという。

 ソウルの街を見ていると、環境問題に配慮していることを売り物にしている店が少なくない。脱炭素、サスティナブル……。しかし寝るときの床暖房の設定は25度……。

 意識の問題なのか、それほど戸外の寒さがきついということなのか。

 泊まったゲストハウスに部屋に入ったときのことを思い出す。宿が気を遣って床暖房のスイッチを入れておいてくれた。設定は25度。ドアを開け、部屋に入ったときの温かさは天にものぼる気分だった。ソウルの床暖房が20度設定になるのはだいぶ先?