IUとパク・ボゴムがW主演しているNetflixシリーズ『おつかれさま』。ドラマの序盤では、IUが演じるオ・エスンとパク・ボゴムが扮するヤン・グァンシクの若き日が鮮烈に描かれていた。中盤からは、中年になったエスン(ムン・ソリ)とグァンシク(パク・ヘジュン)がメインとなってきた。(以下、一部ネタバレを含みます)
■Netflix話題作『おつかさま』の凝った演出「時系列倒置」
『おつかれさま』のNetflix配信状況を見てみよう。3月7日に第1話から第4話までが一挙に配信されて、第5話から第8話までの配信が3月14日だった。
ドラマを見た感想を率直に記すと、第4話までは済州島(チェジュド)を舞台にして主役2人と芸達者な脇役陣が織りなす「人間ドラマ」が骨太で秀逸だった。特に、一途にエスンを愛するグァンシクに感情移入しながら、若き2人を心から応援していた。
しかし、第5話から第8話までの展開では、個人的にちょっと戸惑いがあった。理由はハッキリしている……凝りに凝った「時系列倒置」だ。ムン・ソリが演じる中年のエスンがIUの扮する若きエスンに取って代わる場面が頻出した。
さらには、夫婦の娘クムミョンを演じているのもIUだ。このキャスティングに関して異存はないのだが、時間軸が逆転する時系列倒置があまりに多くて、見ていて集中が途切れることがあった。
もちろん、制作者は十分に意図して時系列倒置を多用しているのだろうが、これほど時間軸が行ったり来たりしていると、個人的には、各場面から受け取る印象が後の展開にうまくつながらないところもある。
こんな想像をしてみる……もしも、時系列をそのままにしてエスンとグァンシクの成長物語をじっくり描く展開であったらどうだろうか、と。頭の中で時間軸を動かさなくてもストレートに物語に入っていけたのではないか、と考えてしまう。
過去のドラマ・映画で時系列倒置を巧みに使った名作は多い。この手法はノスタルジックな場面を有効に際立たせる効果がある。同時に、賛否両論を巻き起こす編集スタイルになっていることも確かだ。
たとえば、元祖韓流トップスターのペ・ヨンジュンが「人生で一番好きな映画」と絶賛していた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』。巨匠セルジオ・レオーネ監督の大作で私も大好きだが、めまぐるしく時系列倒置を繰り返した結果、多くの観客が離れてしまった。監督の意図は観衆に伝わらなかったのだ。