ユ・ジテ×イ・ヨンエ『春の日は過ぎゆく』(2001年)

『八月のクリスマス』のホ・ジノ監督が『四月の雪』の前に撮った作品。実らない恋愛を経験したことのある人なら心がヒリヒリするに違いない出逢いと別れの物語。韓国の四季折々の風情と二人(ユ・ジテ『花様年華〜君といた季節〜』、イ・ヨンエ『宮廷女官チャングムの誓い』)の心象風景が符合する傑作。『八月のクリスマス』同様、日本のファンが多い作品だ。

チョン・ドヨン×ハ・ジョンウ素晴らしい一日』(2008年)

 ハン・ジョンウが前年の『チェイサー』の殺人鬼と同一人物とは思えない、人間味をたっぷり見せてくれる作品。元カノ(チョン・ドヨン)に借りた金を返すため、元カノといっしょに友人知人に金を借りて歩くというユニークな設定だ。終始不機嫌な元カノとお調子者のハ・ジョンウのコントラストがみごと。この2人の会話だけで映画が成立しているといってもいい稀有な作品だ。

キム・テリ×リュ・ジュンヨル 『リトル・フォレスト 春夏秋冬』(2018年)

 都会での生活に疲れた主人公(キム・テリ『二十五、二十一』)が故郷の慶尚北道に戻り、自給自足生活をするストーリー。 薪割りを終えたあと、主人公が母(ムン・ソリ『おつかれさま』)から教わった手作りマッコリを、友だち以上恋人未満の男子(リュ・ジュンヨル『恋のスケッチ〜応答せよ1988〜』)と飲むシーンは白眉。二人が好意の感情を露わにしないので、それが逆に印象に残る。どこか日本的な匂いのある作品だが、それもそのはず、原作は日本のマンガである。

 キム・テリは『ジョンニョン:スター誕生』で今年の百想芸術大賞の女性最優秀演技賞の5人にノミネートされている。同部門には『おつかれさま』のIUもノミネートされていて、誰が栄冠に輝くかに注目が集まる。

キム・ゴウン×チョン・ヘイン 『ユ・ヨルの音楽アルバム』(2019年)

 1990年代の風物と物語を重ねる演出方法が、どこか『おつかれさま』にも通じる作品。街の描写や人々の生活の匂いを感じさせる秀作だ。主演は、若手実力派俳優のキム・ゴウン(『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』『ユミの細胞たち』)と、チョン・ヘイン(『D.P. -脱走兵追跡官-』『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』)。二人の出会い、すれ違い、別れ、そして、意外なエンディングが心に沁みる。

 今年の百想芸術大賞の映画部門では、キム・ゴウンが主演映画『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』で女性最優秀演技賞、チョン・ヘインが『ベテラン~』で男性助演賞にノミネートされている。こちらも賞の行方に注目だ。