『冬のソナタ』の大ヒットによって韓流ブームが日本をはじめアジア各地域で起こり、その波は韓国時代劇に及んだ。特に、『宮廷女官チャングムの誓い』(2003~2004年)は象徴的な作品となった。ラブロマンスから時代劇へ……韓国ドラマはジャンルを超えて普遍的な人気を獲得してきた。
■韓国時代劇ブームを起こした『宮廷女官チャングムの誓い』
『宮廷女官チャングムの誓い』の人気にあやかって、同作の撮影にも使われた楊州(ヤンジュ)市の施設が「大長今(テジャングム)テーマパーク」になった。「大長今」は『宮廷女官チャングムの誓い』の原題である。
そのテーマパークの一角で観光客と写真撮影に応じていたのが、韓服を着たイ・ギョンウォン氏だった。彼は、チ・ジニが扮したミン・ジョンホの部下を演じており、その縁でテーマパークのマスコット的な存在になっていた。取材したのは2005年の秋のことだった(テーマパークは2011年に閉園となった)。
イ・ギョンウォン氏に、『宮廷女官チャングムの誓い』の撮影時の制作状況をじっくり聞いた。
「主役のイ・ヨンエさんはプロ中のプロでした。セリフの暗記が完璧なのです。撮影に入る前はいつも台本を持ち歩いていて、台本にたくさんアンダーラインを引きすぎて、まるでセリフが見えないほどでした。
しかも、撮影が始まれば完全にチャングムに成りきっていますし、気になることがあれば納得するまで演技に没頭していました。自己管理も徹底しており、風邪をひいて体調を崩したことが一度もありませんでした。年下のスタッフたちの面倒もよく見ていて、尊敬できて頼れる大物女優として慕われていました」
撮影現場の熱気も凄まじかったという。
「だからこそ、あれほど視聴者の心を動かすことができたのだと思います。放送中は韓国が経済的に非常に難しいときでした。韓国の人々はこのドラマを通して勇気をもらったことでしょう。朝鮮王朝時代の貧しい出身の女性が最終的には国王の主治医にまでなったという事実はすごいことです。それゆえ、以前に放送されてきたドラマとは比較できません。それほど影響力がとても大きかったです」
撮影当時を懐かしむイ・ギョンウォン氏にとって忘れられない共演者が、チャングムのライバルであるクミョン役を演じたホン・リナだという。
「すごい笑い上戸なんですよ。一度笑いが爆発したら、止まらないのです。私が最高尚宮(チェゴサングン)を逮捕するシーンに臨んだとき、ホン・リナさんが何かのはずみに笑いだして止まらなくなりました。撮影はいったん中断になり、私たちはひたすらホン・リナさんの笑いがおさまるのを待っていました。そんなNGが多かったですね」
