KBS出身のドラマ監督だったキム・ジョンミン氏は、特に時代劇のジャンルで手腕を発揮していた。今まで手掛けた作品は『王女の男』『不滅の恋人』『カンテク~運命の愛~』『コッソンビ 二花院(イファウォン)の秘密』など。
そのキム・ジョンミン氏にインタビューしたのは2012年の秋。前年に『王女の男』が大ヒットして、彼の演出スタイルが高く評価されていた。
■韓国時代劇の傑作『王女の男』、演出家が語った作品への熱い思い
時代劇で史実と架空の話を組み合わせることに関して、キム・ジョンミン氏は率直にこう語った。
「歴史的な記録は明確に残っていますが、その記録の通りに作るとドラマが成立しません。記録の相当な部分を無視しなければならないときもあるのです。以前は、歴史学者たちが時代劇をドラマとして見ないで、歴史についての一つの教材として見る傾向が強く、なぜ記録の通りにしないのかという批判がよくありました」
実際、韓国では2000年代に入ってから、「歴史的記録というリアリティに従うのが果たして時代劇として正しいことなのか」という論争が10年も続いていた。
「2010年頃にやっと縛りが緩和されてきたのです。『王女の男』も最初に“これは実際の記録と違う”ということを明示することで、史実との違いを明確にしました。それにもかかわらず、視聴者が知っている事実を無視して虚構を入れることは簡単に選択できません。そういう試みを受け入れない視聴者もいるからです。
とはいえ、歴史的な事実だけを単純に話すだけではドラマを作る意味がありません。誰もが知っている歴史を通じて、現在の視聴者たちに何を感じてほしいのか。歴史を超える新しい話を求める気持ちが大きいとき、私たちは一歩前に進むことができるのだと思います」
キム・ジョンミン氏が演出家として脚本家に「これだけは取り入れてほしい」と注文することはどの部分だろうか。
「『王女の男』に関していうと、恋愛ロマンスという大衆性が最大のポイントではありますが、私個人が演出者として描きたかったのは、正義ということです。
首陽大君(スヤンデグン)が後世で注目される時期は、概して社会的に抑圧がひどいときです。王になるという目的のために兄弟と甥を殺し、反対する人々を全部処罰した首陽大君。一方で、命をかけて抵抗した死六臣の姿。抑圧的な体制の代表的な時代が首陽大君の生きた時代です。
歴史というのは、現実との接点を持っています。どうしてこの時期に、首陽大君の話を再びしたのか。それは、韓国社会が最近、民主的な部分で後ずさりしているという問題意識があったからです。その話をわざわざ放送でする必要もないかもしれませんが、演出家としてはその問題意識が必要ですし、脚本家たちにも『どうして今の時代に私たちがこういう話をするのか』という意識を持っていてほしかったのです」
このように、『王女の男』には制作側の熱い思いが込められていた。