2010年以降、地上波だけではなくケーブルチャンネルが制作するドラマに傑作が次々に誕生するようになった。特にtvNの存在感が強烈。『応答せよ1997』から『ミセン-未生-』を経て『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』に行き着くドラマの流れは、まさに「韓国ドラマこそ我が人生の最良のエンタメ」という気持ちにさせてくれた。

■『応答せよ1997』『ミセン』『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』、作家性が強い作品が登場

 まさに、tvNに代表される「ケーブルチャンネルが放送するドラマ」には、既存の地上波ではやらない斬新さがあった。実際、従来の既視感があるドラマと一線を画すような企画性の中から作家性が強い作品が登場するようになった。そのことを特に意識させてくれたのが『応答せよ1997』(2012年)である。

 推しのアイドルを追っかけるソン・シウォン(チョン・ウンジ)と、彼女が初恋の相手だったユン・ユンジェ(ソ・イングク)……2人の高校時代とその後の再会がスリリングに描かれていく。1話ずつ凝りに凝った作りになっていて、視聴者を決して飽きさせない。それどころか、笑えて泣ける展開は見る人の感性を最後まで気持ちよく刺激してくれる。しかも、毎話奮発されるギャグのセンスも特上だった。

「すごい演出家が出てきたなあ」

 そう感心させてくれたのがシン・ウォンホ監督である。

 バラエティ出身の演出家がいきなり「とびぬけた才能」を見せるのが韓国芸能界の底力と言える。こうして生まれた「応答せよ」シリーズ。『応答せよ1997』、『応答せよ1994』(2013年)、『恋のスケッチ~応答せよ1988~』(2015年)という3部作にはハズレがない。しかも、続編になるほど描かれる時代がさかのぼっていくという構成がむしろ目新しい。

 シン・ウォンホ監督は続いて『賢い医師生活』シリーズ(2020年~)でも、あふれる才能を大いに見せてくれた。

 作家性の高い監督ならば、真打はキム・ウォンソク監督だ。『ミセン-未生-』(2014年)は最後まで夢中になって見た傑作である。囲碁の世界をあきらめて大手商社に契約社員として入ったチャン・グレ(イム・シワン)と人情派の上司オ・サンシク(イ・ソンミン)。2人のからみを中心に、企業の様々な部署の人間模様が生々しく再現されていた。

 それでも、キム・ウォンソク監督の白眉は『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』(2018年)。日の当たらない薄幸な人に優しい光を届けるのが韓国ドラマの真髄だとすると、まさに象徴的な作品だった。

 薄幸の女性イ・ジアン(IU)の悲しい境遇が序盤から展開する中で、パク・ドンフン(イ・ソンギュン)の人間味あふれる生き方にグッと惹かれるし、彼を含めた3兄弟の地元愛や家族愛が珠玉の名場面を作り出していた。

『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』(C)STUDIO DRAGON CORPORATION