小学校時代に出会い、何度か別れと再会を繰り返したウンジュン(キム・ゴウン)とサンヨン(パク・ジヒョン)が、社会に出てから再び出会うところから始まるNetflixドラマ『ウンジュンとサンヨン』。二人が多感な時期を過ごした1990年代とはどんな時代だったのだろう。
■『ウンジュンとサンヨン』の背景、サンヨンが転校してきた1992年、キム・ヨンサムが次期大統領に
小学生だったウンジュンのクラスに転校生サンヨンが入ってきたのは1992年のこと。前大統領チョン・ドゥファン(全斗煥)と陸軍士官学校の同期だったノ・テウ(盧泰愚)大統領が任期を終える数カ月前、キム・デジュン(金大中)と並ぶ民主化のリーダーだったキム・ヨンサム(金泳三)が次期大統領選挙に勝利した年だ。
北朝鮮との緊張関係は相変わらずだったが、韓国はこの年に中国と国交樹立。その前年にはキム・ユンソク主演映画『モガディシュ 脱出までの14日間』に描かれたように南北が同時に国連加盟。その2年前にはソ連との国交樹立も果たしていたため、ようやく安らかな時代が訪れるのではという期待にあふれていた。
当時、筆者はソウルの大学院生。それなりに社会意識を育んでいたので、不正や不公平には人並に敏感だった。ウンジュンの担任の先生が、アパート(マンション)に住んでいたり、親の社会的地位が高かったりする生徒をひいきし、ウンジュンの家があるような庶民の生活圏に住む生徒を差別していたのは胸が痛んだが、あのようなことは現実にあった。
この2年後、文民政権下で初演され、ソル・ギョング、キム・ユンソク、ファン・ジョンミン、アン・ネサン、キム・スンウ、イ・ジョンウンなど、のちに映画やドラマで活躍する俳優を大勢輩出したロックミュージカル『地下鉄1号線』にも、ソウルの不動産投資に血道を上げる江南の主婦たちを揶揄する歌があった。
国情が安定してくると、人は物理的な豊かさを求め始めるのだろう。今の韓国の格差社会の萌芽はこの頃にあったと言っていい。
■ウンジュンとサンヨンが再会した翌年にはIMF事態が……
ウンジュンとサンヨンが再会したのは1996年、二人が中学二年生のとき。2002年のサッカーW杯日韓共催が決まった年だ
期待されたキム・ヨンサム政権だが、軍事独裁政権の清算には貢献したものの経済政策には失敗。外国債務が大統領就任当時の3倍にも膨れ上がり、1997年の11月にはついにIМFの管理下に置かれることになる。