■イ・ソンギュン(1975年生まれ)

 日本の韓流ファンに「好きな韓国ドラマは?」とアンケートをとったら、ベストテン入りは確実と思われる『マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~』で視聴者の涙を絞り、米国アカデミー賞受賞作『パラサイト 半地下の家族』で主演のソン・ガンホと互角の演技を見せながら、2023年末にこの世を去ったイ・ソンギュン。

 ホン・サンス作品デビューは、2007年の『アバンチュールはパリで』の平壌から来た留学生役。初対面にも関わらず北朝鮮を悪しざまに言う主人公(キム・ヨンホ)にまっすぐにぶつかっていく演技と流暢な北朝鮮訛りに、「ただ者じゃない」という感想をもった鑑賞者は多いだろう。

 2010年の『教授とわたし、そして映画』や2012年の『ヘウォンの恋愛日記』、2013年の『ソニはご機嫌ななめ』では、チョン・ユミやチョン・ウンチェが演じたヒロインに振り回される滑稽な映画監督に扮し、その演技力を印象付けた。存命ならさらにホン・サンス作品に出演したはずだ。

■ユ・ジュンサン(1970年生まれ)

 ホン・サンス作品の主人公の職業は映画監督や大学教授が多く、キャラクターも似通っているのだが、ユ・ジュンサンの役は例外だった。

よく知りもしないくせに』(2008年)では、講師として招聘した後輩の映画監督(キム・テウ)を邪険に扱う屈折した先輩を、『ハハハ』(2010年)や『ヘウォンの恋愛日記』(2011年)では鬱病に悩みながら不倫相手の女性を連れ歩く情緒不安定な映画評論家を、『次の朝は他人』(2011年)では虚ろな目でソウルの北村をほっつき歩く売れない映画監督を主演。『3人のアンヌ』(2011年)では海水浴場の快活なライフガードに扮するなど、多彩な役柄を演じ分けた。

 この十年ほどは、『正しい日 間違えた日』(2015年)の映画祭MC役、『あなた自身とあなたのこと』(2016年)の脂っこい中年役、『川沿いのホテル』(2019年)の詩人(キ・ジュボン)の頼りない息子役など助演に徹している。今でも舞台で活躍する演技派だけに、今後、主役としての再登板もあり得るだろう。

キム・サンギョン(1972年生まれ)

 2002年の『気まぐれな唇』(俳優役)、2005年の『映画館の恋』(映画監督の卵役)、2010年の『ハハハ』(映画監督役)の3作に主演。いずれもストーカー気質があり、人格的にバランスを欠いた中年男性を演じている。

『ハハハ』では、ユン・ヨジョン扮するオモニに頭が上がらず、いい年をして母親にハンガーで折檻される様子が印象的だった。ホン・サンスの母チョン・オクスクは1984年に関釜フェリー船上で撮影された日韓討論番組「玄界灘の5時間!日韓の影と新しい光」を制作した非凡な女性で、ホン・サンスは米国留学から帰国後、彼女が運営する映像制作会社で働いている。キム・サンギョン演じる母親に頭が上がらない息子役は、ひょっとするとかつての監督そのものなのではと思ってしまう。

■キム・テウ(1971年生まれ)

 ユ・ジテ主演『女は男の未来だ』(2004年)、キム・スンウ&コ・ヒョンジョン主演『浜辺の女』(2006年)、主演作『よく知りもしないくせに』(2009年)の3作で、感情の起伏の激しい映画監督や美術監督に扮している。

『よく知りもしないくせに』では、ゲストとして招かれ堤川や済州まで来たのに、『シスターズ』のオム・ジウォン扮する映画祭PDや『82年生まれ、キム・ジヨン』のチョン・ユミ扮する人妻、ユ・ジュンサン扮する先輩たちに冷遇される散々な役が見ものだ。もしこれがホン・サンス監督の実体験だとしたら、同情を禁じえない。

■ペク・チョンハク(1964年生まれ)

 ペク・チョンハクは日本での知名度は高くないかもしれないが、日本映画『新聞記者』『旅と日々』のシム・ウンギョン主演映画『サニー 永遠の仲間たち』で、成人後の主人公(ユ・ホジョン)の夫に扮した俳優と聞けば、思い出す人もいるだろう。

 ホン・サンスの初期作品『カンウォンドのチカラ』(1998年)の利己的だが脆さも見え隠れする大学講師役は、当時30代後半で尖っていたことが容易に想像できるホン・サンスの分身そのものではないだろうか。

『カンウォンドのチカラ』のペク・チョンハク(右)とチョン・ジェヒョン(C)MIRACIN ENTERTAINMENT CO.LTD

協力:ミモザフィルムズ

●映画公開情報

監督デビュー30周年記念「月刊ホン・サンス」 

『旅人の必需品』『小川のほとりで』『水の中で』『私たちの一日』『自然は君に何を語るのか』

2024年11月~2025年3月、ユーロスペース(東京・渋谷)ほかで順次公開