韓国に行くときの飛行機内でたまたま観た映画が当たりだと、得した気分になる。大寒波がソウルを襲った先日、羽田から金浦に向かう大韓航空機内で視聴した韓国映画『1勝』(2024年)はまさにそんな作品だった。主演がソン・ガンホであるにもかかわらず日本では配給されず、ほとんど話題にもならなかった作品なので、なおさらだ。
■映画『1勝』でダメ監督をのびのびと演じる名優ソン・ガンホ
『1勝』は、過去に担当した女子バレーチームを一度も勝たせたことのないダメ監督(ソン・ガンホ)が、解散寸前のチーム「ピンクストーム」を任せられることになり、チームオーナーが提示した「1勝すれば報奨金20億ウォン」を目指して奮闘する話だ。
バレーのことは何も知らず、SNSなどを通じてチームを有名にすることばかり考えているオーナー役に、『ニュートピア』『地獄が呼んでいる』『ハルビン』のパク・ジョンミン。監督を助けるスタッフ役に『愛の不時着』『パラサイト 半地下の家族』のパク・ミョンフン。
競合チームの若い監督役に『賢い医師生活』『魅惑の人』のチョ・ジョンソク。ロートル選手役に映画『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』『涙の女王』のチャン・ユンジュ。ダメ監督と疎遠になっている妻役に『モガディシュ 脱出までの14日間』『非常宣言』のキム・ソジンなど、ソン・ガンホ主演作だけに助演の俳優たちも豪華だ。
■ソン・ガンホの演技力がモノを言う典型的な韓流スポ根
ストーリーは、アン・ジェホン主演映画『リバウンド』、ハ・ジウォン&ペ・ドゥナ主演映画『ハナ~奇跡の46日間~』、ハ・ジョンウ主演映画『国家代表!?』にも通じる典型的な韓流スポ根。ラストでは映画『ロッキー』のテーマのひとつ「Going The Distance」が流れるほどベタなのだが、ソン・ガンホの演技力とテンポのよい映像で飽きずに見せ、最後は落涙しそうになるほどだった。後味もよい。
難しいことを考えずに楽しめる作品なのだが、新鮮だったのは、ソン・ガンホ扮する監督が選手たちのモチベーションをアップさせた手法だ。韓国のスポーツ界は、ある時期までの日本同様、鋼を叩いて強くするような選手育成方式、言い換えれば軍隊式が主流だった。
それが大きく変わったのが、フース・ヒディンク監督が2000年から韓国の監督を務め、2002年FIFAワードカップでチームを躍進させた頃からだろう。選手の人心を掌握し、頭ごなしに叱ったりせず、自身で考えさせる。それに加え論理的かつ科学的なトレーニングを施して成功したのだ。