今年の1月5日、74歳で惜しまれつつこの世を去った俳優アン・ソンギの葬儀には『ソウルの春』のチョン・ウソンや『イカゲーム』のイ・ジョンジェをはじめ、イ・ビョンホンパク・チュンフンソル・ギョングキム・ヘスらトップ俳優たちが大勢駆け付けた。

 アン・ソンギは1950年代から子役としてスクリーンで活躍してきた俳優だ。2020年に米国アカデミー賞を独占した『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)のモチ―フとなった映画「下女」(1960年)では、主人公の息子に扮していた。

 1980年代から2000年代にかけては多くのヒット作に出演。国民的俳優と呼ばれた唯一の人物だ。2024年の「韓国人が好きな韓国映画俳優」調査では、すでに第一線を退いていたにもかかわらず17位の人気を示し、今後の活躍が期待されていた。

 今回は韓流ファンにもなじみのある俳優と共演したヒューマン作や青春劇、コメディ映画を通してアン・ソンギの魅力を振り返ってみよう。

■74歳で亡くなった名優アン・ソンギ、映画傑作選〈ロマンス&コメディ編〉

●『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』『D.P. -脱走兵追跡官-』チョン・ソギョンと共演した『ラジオスター』(2006年)

 パク・チュンフン扮する落ち目の歌手とアン・ソンギ扮するマネージャーが地方局でラジオ番組を担当することになる話。わがままな歌手をなだめながら、なんとかもう一花咲かせようとするマネージャーが田舎町で奮闘する。

 スタジオの掃除から始める技術者(チョン・ソギョン)とマネージャーの息の合った連係雑巾がけプレーが見ものだ。ラジオ番組は喫茶店の接待嬢が生放送中に母親に語りかけたことが聴取者の心を打ったことをきっかけに人気を得てゆく。彼女の語りでうるっときてしまうマネージャーには笑わされ、泣かされる。接待嬢を演じたのは『トクスリ5兄弟をよろしく!』や映画『鋼鉄の雨』のアン・ミナ。

パク・チュンフン扮する歌手とアン・ソンギ扮するマネージャーが出入りした江原道、寧越の喫茶店。寧越は韓国でヒット中の映画『王と生きる男』の舞台でもある

ホン・サンス監督作品の常連ソン・ソンミと共演した『美術館の隣の動物園』(1998年)

 日本でもヒットした『シュリ』以前の映画だが、日本のファンも多い。アン・ソンギはシム・ウナ扮する主人公が片思いする年上の国会議員補佐官と、主人公が書くシナリオの劇中人物(ソン・ソンミ)の相手役の二役を演じている。40代のアン・ソンギの二枚目半的な演技が楽しめる作品。

 のちに『スタートアップ:夢の扉』や『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』に出演するソン・ソンミは、ホン・サンス監督作品初主演作『彼女が帰って来た日』が先日のベルリン国際映画祭で招待作として上映されている話題のベテラン女優だ。

ソン・ソンミ(写真中央)はホン・サンス監督作品の常連俳優。日本で公開中の『私たちの一日』ではキム・ミニ扮する主人公の友人役に扮している。(C)2023 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.

●1990年代のトップスター、パク・チュンフンと共演した『トゥー・コップス』(1993年)

 一応の民主化が成ってから数年しか経っていない1990年代の韓国映画には重苦しい作品が少なくなかったが、本作はアン・ソンギとパク・チュンフンという当時のトップスターを起用した刑事もので、ひたすら笑って楽しめる作品に仕上がっている。

 前半はアン・ソンギ扮するぐうたら刑事とパク・チュンフン扮するまじめ一本鎗の刑事のコントラストで笑わせるが、後半はキャラが完全に逆転するところが見ものだ。