映画『しあわせな選択』は、リストラされた会社員が再就職のために、恐ろしい行動を起こすブラックコメディだ。愛する家族とライバルたちとの板挟みで苦しむ主人公に扮するのは、『イカゲーム』『KCIA 南山の部長たち』のイ・ビョンホン。夫の凶行を疑いながらも、冷徹に家計を立て直そうとする妻役に『愛の不時着』『39歳』のソン・イェジンが扮する。

■映画『しあわせな選択』脇役を演じる実力派俳優たち!

 イ・ビョンホンとソン・イェジンというトップ俳優二人が夫婦役というだけでじゅうぶん豪華なのだが、本作は主人公が蹴落とそうとするライバルに扮した俳優たちが、本来なら映画の主役級ばかりだ。ここでは、脇役を演じた実力派俳優たちを紹介していこう。

●圧倒的な演技力を見せる遅咲き俳優イ・ソンミン

 主人公に似た境遇の会社員に扮したのはイ・ソンミン(1968年生まれ)だ。同世代のイ・ビョンホンが20代でスターになったのに対し、イ・ソンミンは30代後半のときに出演した『シークレット・サンシャイン』でもまだチョイ役。遅咲きもいいところだった。

 2010年代に入り『弁護人』での新聞記者役などで存在感を示し始める。40代後半には『ロボット:SORI(音)』や『保安官』で主役をつかむ。その後は、『目撃者』『工作 黒金星(ブラックヴィーナス)と呼ばれた男』『KCIA 南山の部長たち』などで演技派としての評価を決定づけた。

 なかでも、殺人犯に追い詰められる役でありながらコミカルな味が印象的だった『目撃者』と、朴正煕大統領の苦悩にフォーカスした『KCIA 南山の部長たち』の演技は必見だ。

ヨム・ヘランが毒と業をすべて吐き出す怪演!

 主人公同様、苦悩する求職者(イ・ソンミン)の妻役は、ここ数年、ドラマ『おつかれさま』『マスクガール』『ザ・グローリー~輝かしき復讐~』、映画『ガール・コップス』『市民捜査官ドッキ』などで大活躍のヨム・ヘラン(1976年生まれ)。

 今回はデビュー作『殺人の追憶』(2003年)以来、彼女がためにためてきた業や毒をすべて吐き出すような演技を見せてくれた。生活感と喜怒哀楽のリアリティが持ち味の俳優ヨム・ヘランの集大成だ。

チャ・スンウォンが腰の低い善人役という意外性

 強い目力、身長190cm近い堂々たる体躯から、悪役や暴君の役の印象が強いチャ・スンウォン(1970年生まれ)だが、『しあわせな選択』では珍しく善良で腰の低い人物に扮している。パク・チャヌク監督は、高身長の男がペコペコする姿がおもしろそうということで、彼を起用したそうだ。

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 チャ・スンウォンのそんな姿が見られる作品としてまず思い出すのは、イ・ビョンホンやイ・ジョンウンと共演した『私たちのブルース』だ。ソウルで出世街道を走っていたエリートが失敗して故郷に戻り、卑屈な姿を見せる演技を見て身につまされた人も多かっただろう。

 平壌からソウルにやってきた脱北者に扮した『約束』の演技も記憶に残っている。平壌の恋人(チョ・イジン)と涙の別れをしてソウルにやってきて、韓国女性(シム・ヘジン)と結ばれる。しかし、彼を追ってあとから脱北してきた恋人と再会してしまい葛藤するという難役だった。